記者 所で、大映では兵介と綱四郎の最後の一騎打ちの件を、原作でもどっちが勝ったか読者にも解らなかったという点を利用して、映画でも両人の真剣試合の勝負を最後まで伏せてゆくそうですが、この点どう思いますか。

雷蔵 それも一種の宣伝方法としては、面白いと思いますが、僕も原作を読んだが、両人の勝負が読者にも解らなかったということは、おかしいと思いますネ。最後の文章では、成程はっきり誰が勝ったか、書いてありませんが、全部読めば解る筈です。映画でも最後の決斗シーンまで、勝負を伏せて置く訳にはゆかないでしょう。決斗にまでゆく雰囲気で、大体解ると思いますネ。またそうしなければ、返って無理が出て来るでしょうネ。

 僕は原作をまだ読んでいないのだが、最後の決斗はどんな風に書いているの。

記者 原作にはこう書いてあるのです。ここに控えがありますから読んでみましょう。

綱四郎は陽を背にして立ち、連也斎(兵介)は、敵の先端を踏みながら、徐々に接近する、一瞬、二つの剣がきらめく、片方がニヤリと笑い、笑ったと思うと、どうと倒れる血潮がパツと噴き出す。

−というのです。

雷蔵 文章通りには、映画ではゆかないが、山場の真剣勝負は、田坂監督も苦心しているようです。

 それに今度のは、両人が睨み合うだけで、剣戟を一切やらないのだから、雰囲気を盛りあげてゆかなくてならないのだから、僕等も、対立する毎に殺気をみなぎらせなくてはならないから、この点一苦労だネ。

雷蔵 そこだヨ問題は、その点うまく出来れば、変った時代劇が生れるだろう。

記者 その点が注目されています。田坂監督は、雷蔵さん勝さん、成年さんたちが、撮影前から、張り切って殺気立つている模様だから、演技の真剣勝負をやって呉れるでしょうといっていました。

 そういわれては、尚辛いが、まア真剣勝負の気持で、懸命にやろう、なア雷ちゃんそうだろう。

雷蔵 勿論だヨ、是非新しい感覚の時代劇を僕等の作品で生み出したいナ。

 ただ心配なのはシナリオは原作とは可成りちがったものだそうだが、やはり武蔵、小次郎の臭いがあるから、巌流島の単なる模倣に終らないようにしたいナ。

雷蔵 それは田坂監督も、気にしているようだし、原作の結末が、西部劇の模倣のようにいわれているようなので、そうした点も充分考慮に入れて、剣の殺気で盛り上げてゆく手法を取るというから、その心配はないと思うヨ。

 キャメラはヴェテランの杉山公平さん担当だから、雰囲気描写も大丈夫だろう。

記者 では、大映の宣伝に顧慮して、兵介、綱四郎の真剣勝負の結果はどうなるかは映画が完成するまで、お預けということにしますが、近ごろ麻雀が、スタジオ大分流行しているようですが、麻雀では兵介と綱四郎は、どつちが強いのですか。

雷蔵 どうだかナ、綱四郎も中々負けてはいないようだがナ。

 では麻雀に於ても、一度、真剣勝負をやって頂かなくてはなりませんネ。(映画ファン56年4月号より)