シリーズものを批判する

E. それに、今は主役一人では駄目で、相手役が良くなければお客が入らないのね。

D. 洋画を見れば分かるじゃないの。いい顔ぶれの作品が沢山あるでしょう。外国は今の映画界の苦況を切り抜けるようにしているんでしょ。それに洋画は当っている・・・。

A. 他社から借りればいいのにね。ギャラが合わないのでしょうか。

B. 大映の株見た?あれじゃ、他社から借りられないわよ。

D. 資本もかけないで儲けようとは・・・。無理よ。勝さんと一緒に出せばいいのに。ただし、一年に一度くらい。二本分のお金を使って、時代劇の大作をね。雷蔵さんと勝さんは個性が違うからいいと思うのに。

『長脇差忠臣蔵』(1962年)に大前田英五郎役で出演。これが最後の共演作(但し、本格的な二人の共演作は『花くらべ狸道中』が最後)

B. 映画館に入って、以前はドアをあけると人いきれでムッとしたけれど、今は涼しい風が吹いてくる。(笑)

D. 大体、出演者やファンがお客の入りを心配しているようではね、いけないですよ。

C. 今のお客はまったくのお人好しですよ、飽きもしないで、シリーズの同じものを見に行くんですもの。でも、二度見に行こうとは思いません。いくらファンでも。(笑)

B. 雷蔵さんを、今みたいな映画ばかりに出すんなら、お芝居の方がよっぽどいいと思います。

A. さもなければ、テレビの方がいい。

E. 私は芝居に出るのは賛成ですが、テレビはまだもったいないと思います。

A. でも、単発ものなら、テレビでもいいと思います。

D. 今はいいものがあるわね。

C. 山本周五郎のものなんか、雷蔵さんにぴったりなのに、どうして映画化しないのかしら。

D. 「ながい坂」なんかいいのに。(みわ注:全く同感)

B. 大映は昔から現代的感覚のある時代劇を作っていたのに、残念ね。誉めるのは過去の作品ばかりとは、私達も見るのに張り合いがありません。

(よ志哉より 1966年)

1966年出演作品表

若親分喧嘩状
忍びの者・新霧隠才蔵
眠狂四郎多情剣
若親分乗り込む
陸軍中野学校
大殺陣雄呂血
若親分あばれ飛車
陸軍中野学校 雲一号指令
眠狂四郎無頼剣
新書忍びの者

(10作中『大殺陣雄呂血』を除く、9本がシリーズもの)