披露宴での挨拶

 昭和37年3月27日、東京赤坂、ホテル・ニュージャパンで、市川雷蔵の結婚披露宴があった。

 会する者、媒酌人の大日本製糖社長藤山勝彦夫妻、新郎側の市川寿海、新婦側の永田雅一夫妻、そして長谷川一夫、山本富士子に勝新太郎、玉緒夫妻、多数の映画人の他に、政界からは故人となった大野伴睦をはじめ河野一郎、岸信介、川島正次郎等々、文壇からは舟橋聖一、久保万太郎、三島由紀夫、吉屋信子等々、劇壇からは市川団十郎、中村歌右衛門、中村勘三郎等々、その他花柳寿輔、杵屋勝東治、橋幸夫等、多方面の出席者、無慮二百八十名、空前の盛宴であった。

 更に祝電は吉川英治、山崎豊子、水谷八重子、横綱大鵬等々、といった異色の顔触れで、まったく絢爛たるものであった。単に華々しい、というだけでなく(以来、多数の芸能人のケバケバしい結婚式が行われ、識者のひんしゅくを買うことになったが)花も実もある、なかなかに、ゆかしいつどいでもあったのである。

 僕は当夜の来賓の祝辞の中で、特に三島由紀夫の名スピーチが印象に残っていたので、いま、雷蔵君の手許にあるテープからここに再録させて貰うことにする。