◎雷蔵君は人知らぬ苦労

今年は仕上げの年

 去る二十八年に『花の白虎隊』でデビューするとき

 「映画俳優五ヵ年計画というのをたてたんです。石の上にも三年といいますから、最初の三年間は基礎工事に当てて、古典ものでも娯楽ものでも幅広く出演してきました。ことしは四年目ですからいよいよ仕上げにかからねばなりません。この意味で、会社にも企画に慎重を期していただくようにお願いしてあります。今までの私にはなかった新しい可能性を引き出していただきたいと思っているのです。時代劇というと何度も映画化された同じ素材が、平気で蒸し返されているようではいけないと思うのです。」

やりたい「なよたけ」

 将来はプロデューサー兼監督になりたいという雷蔵は企画には熱心で、昨年度は『桃太郎侍』を自ら求めて映画化したこともあり

 「いま私が考えている企画は、まず近松ものの“槍の権三”や歌舞伎でもやったことのある“重惟”など。さらに去年からぜひやりたいと思っている井上靖の“風と雲と砦”も、ワイド時代になり原作のもつスケールの大きさが出せるようになったので、ことしこそ可能性があるぞ、と思っています。このほかでは“なよたけ”の文麿はどうしても演りたい念願ものの一つですし、長谷川伸先生の“伝典ざむらい”なども面白いと思う」

 と意欲のほどをみせている。