☆お姫様返上!!

高千穂 (急に改まって)ところでね、わたし雷蔵さんに、ききたいことあるの。

雷蔵 なにさ、急に坐りなおして・・・。

高千穂 あのね、相手役の女優がいるでしょ、その人にこうやってもらったら、演技しやすいといったような希望。それをおききするととても参考になると思うだけど・・・。

雷蔵 こりゃあまともな問題で、だいぶむつかしいな。相手も僕も演技プランをもっているでしょう。ここはこうしたい、ああしたいって。それが一致しないときなんだな、問題は。僕はまず話しあうな、自分の思ったとおりまず話しますよ。

高千穂 でも相手が上手だと定評のある人の場合なんかは困るでしょう。

雷蔵 芸歴によってちがうんだろうけど、人間同士だもん、思ったとおりいうさ。若いんだもの、監督さんも相手もクソクラエぐらいの気持でやるよりほかないね。僕はそうしてる。

高千穂 (おどろいた様子)さすが次男坊的ね。思ったとおりズバッといえるなんて、羨ましいワ。

雷蔵 わがままなんだな。ズバリズバリいうのは僕のくせなんだもの。仕方ないや。そこへゆくとひづるちゃんなんか、オシトヤカでお姫さまのよう・・・。

高千穂 よしてよ、お姫さまだなんて。このごろお姫さまみたいなんていわれると、くさるの。いい年して、恥かしくって・・・だってファン・レターには、必ずといってよいくらい書いてあるんだもの。

雷蔵 僕とおない年くらいでしょ、それじゃそう恥かしがらなくても・・・。

高千穂 でも、もう返上するワお姫さまなんて。(笑)そろそろモダンなものやってみたいワ。

雷蔵 そうだよ、ひづるちゃんはホームドラマむきだね。

高千穂 だめ、ナニナニむきっていうの。どんな役でも万遍なくやってみたいワ。一ツのきまったものでなしに・・・。

雷蔵 そりゃそうさ、しかし僕はまだ新米だから、なんでも、やらしてくれるものなら、嬉しがってる。えらいだろ。(笑)

高千穂 またいばってる。そういばらなけりゃ、ホメてあげるのに・・・殊勝な心がけだって。

雷蔵 現代ものやってみたいな。できるかどうかわかんないけど・・・それも上方の・・・ドラ息子。(笑)

高千穂 次男坊でいばってるっていう感じの役ね。

雷蔵 そりゃ地でゆけるっていうわけ?

高千穂 まァ、そういうところね。