−今度の『華岡青洲の妻』における役づくりについて。

 役がむずかしいね。ストーリーが嫁と姑の話なので、青洲がまん中にいてテンビンみたいなものやから。・・・軸がなければならないが、表面に出ない。そういう役だから非常にこれはむずかしい。

 僕がいままでやったのはワンマン映画だからねえ。こういうのははじめてでしょ。下手すれば、労多くして功少なしですわ。その中でやはり出たからには、いかにも華岡青洲を表現しなければならない。僕のようなタイプよりも意思堅固でしょ。わりあい個性的に役柄を組み立てていかないとならない。見た目にわからぬ苦労がある。まあ縁の下の力持ちといったところかな。男優さんでやりたい人はいないんじゃないかな。

−ぜひやってみたい役。

 市川雷蔵としてやりたいもはいろいろあるが、阿川弘之の『舷燈』などやってみたいと思うな。

−映画の○○賞をどう思う。

 賞はもらって悪いことはないけど、僕らにいわせれば、ガチャガチャたくさんあるよりは、もっと整理して権威のあるものにしたらいいと思いますね。

−これまでで一番気に入った作品は。

 好きな映画種々雑多あるが、忘れられない作品は『炎上』。それから『新・平家物語』だな。これで存在価値を認められたのだから。一歩ずつ上るところをが五段上ったというところでしょうね。こういう商売には転機をもたらすものがあるものだ。それをどうつかむかが問題だね。僕の場合、大映の専属の中でそれをやるのだからむずかしい。うちの会社の社長が「棚からボタ餅というが、棚の下まで行くのは君たちの力だ」とよくいうんですがね。確かに棚の下まで行かなければ、ボタ餅が落っこって来ても食べられんわけだ。

−日本映画を盛り返すには。

 やはりお客に見たいと思わせることが大切でしょうねえ。それにいまの興行形態が変わらんといかんと思う。二週間替わりでとっかえひっかえやっていりるようじゃしょうがないですよ。それに日本映画は視覚的じゃないでしょ。どうしても話でつないでいくからつまらない。時代劇なんてとくにそうなんやけど、海外へ輸出するなどということになったら。もっと説明をはぶいて。視覚的なものにしないといけません。ハワイやアメリカの太平洋岸では、大映の時代劇をよくやっていて。よく受けいているといいますけどね。