『切られ与三郎』で共演する市川雷蔵と中村玉緒

 大映のドル箱スター市川雷蔵も、もう二十九歳。長谷川一夫とともに、大映時代劇を背負ってたつ重鎮とし、最高の待遇を与えられているが、この雷蔵にたった一つの欠点(?)がある。結婚適齢期でありながら、まだ、候補者もいないということである。

 欠点ということばは当らないかも知れないが、ブルーリボン賞は獲得したし、人気もベスト・ファイブにランクされている彼が、いつまでも独身でいるというということは、ファンならずとも心配の種だし、また、結婚してはいけないという理由がどこにもみつからないのである。

 人気にさしさわるという人もいるが、長谷川一夫や市川右太衛門らは、雷蔵の年齢のときには、もうとっくに結婚していた。もちろん、結婚するしないは当人の自由だが、最近、その彼をめぐって、二、三の結婚話がチラホラとうわさされている。

 意中の人は?

 噂の第一は、やはり、大映の若尾文子だ。雷蔵と若尾は、『安珍と清姫』で共演することになっているが、大映では、恋の執念にもだえる“清姫”に、若尾文子を起用するのはミスキャストだとしていたのを、雷蔵たっての希望で、ふり当てたというくらい。

 彼は、かねがね、

 「ぼくは、いつまでも清潔な感じの女性が好きだ。たとえば、若尾ちゃんみたいな・・・」といっていたから、こんどの『安珍と清姫』にも、共演を願ったとも見られる。