暇さえあれば上京する雷蔵は宿舎を帝国ホテルに決めているが、ときおり、若尾の家に泊りに行く。これも雷蔵と若尾の仲をうんねんされる材料となるのだが、これは、決してスキャンダルのたぐいではない。若尾の家には、姉夫婦も同居しているし、雷蔵とて、そんなフシダラな男ではない。つまり、それほど親しい間柄ということである。

 一説によると、雷蔵の養父市川寿海が、梨園(歌舞伎界)から嫁を選んでやろうというのを雷蔵は頑強に拒み、意中の人がいると断言したところ、“意中の人は?”と問いつめられて、若尾の名をいったということだ。

 いまのところ、若尾も演技力が認められ仕事がおもしろくてたまらないという状況だから、この話、どう展開するかわからないが、二人の間には、口約束ができているらしいと、一部では信じられているそうだ。とにかく、ファンとしても、このカップルはまことにお似合いで、文句のつけようがないというところか。

清純派二番手は

 噂の二番手は中村玉緒。これは永田社長がじきじきにご指名になったという。永田社長は、人も知る映画界の幡院長兵衛をもって任じている人物。身内のものの一身上のことまで心配するのは当然のことと信じているから、結婚適齢期にある雷蔵のことについても、いろいろと心配していた。結婚させるとなると、大映の利になるようにしなければならない。天下の人気スターに、平凡な女性を結びつけても意味がないというわけで、梨園の名門中村鴈治郎の娘である中村玉緒に白羽の矢をたてたというのである。

 永田社長は、以前、長谷川一夫の娘小野道子と雷蔵をいっしょにさせようと考えたことがあったが、小野道子には、歌手の青山ヨシオという意中の人がいたため、ご破算となり、こんどは玉緒に目を向けたようだ。すでに鴈治郎はOKし、あとは玉緒と雷蔵の気持ちがピッタリとするのを待つばかりという状態らしい。

 もちろん、玉緒も、雷蔵のいう好きなタイプ“清純派”だから、若尾を結婚候補者の本命とするならば、玉緒は、さしずめ、対抗というところか。

 「ぼくも、そろそろ身を固めんとさびしゅうてかなわんな」

 雷蔵は、最近、こう慨嘆しているというから、ファンの前に“わたしの選んだ人を見てください”と宣言するのも間近と考えられる。

 はたして、だれが、天下の二枚目市川雷蔵のハートを射止めるか、興味シンシンたるものがある。