大映の新しき風

大映が本年度、時代劇で大々的に売出そうとするのがこの市川雷蔵と勝新太郎の二人である。

時代劇に新人の登場が待望されながら、なかなか出て来ない。時代劇というものは約束ごとが多いので、ある程度の基礎的な訓練が必要なわけである。そういう意味で、雷蔵は歌舞伎の若手人気俳優であり、新太郎は長唄の三味線の名取りであるということは、時代劇俳優としての将来が約束されているといってもよいだろう。

昨年「花の白虎隊」で二人が同時にデビューして以来それぞれ数本の作品に出演、俳優としての試験期を終えたわけであるが、その演技力の確かさとあふれる近代性はまことに得難いものである。既に二人は「次男坊鴉」「次男坊判官」「花ざかり男一代」「天下を狙う美少年」にそれぞれ成長振りを見せており、大映としても二人のための作品を続々と企画し、発表する予定である。

雷蔵の繊細さ、新太郎の奔放には共に日本映画界の新風を吹きこむものとして大いに楽しみにしている。(大映本社宣伝部長)(映画ファン55年5月号より)