華麗なる初顔合わせ。雷蔵源氏にマッちゃんの藤壺
死ぬほど恋したい
寿美: 光源氏や、藤壺が、京都を歩いていたかと思うと、ちょっとカンゲキですね。そう思ってみると、みるものすべてがすごく楽しいわ。
雷蔵: ぼくは、京都ぐらしが七年になりますが、いいところですよ。東京は、なにしろ空気がよごれてる。(笑)
寿美: それに、せかせかしてるし・・・
雷蔵: うん、ただ、京都ってところは、仕事をする町じゃないね、ビジネスはやはり東京ですよ。レジャー・シティ(観光都市)とビジネス・シティ(事業都市)のちがいだね。
寿美: たしかに仕事は東京ね。たまに東京の空気を吸うとイキイキするわ。
雷蔵: 東京のナイト・クラブなんかへは遊びにいくの?
寿美: ショーはみにいきます。もちろん職業意識でやけど・・・。(笑)
雷蔵: しかし、お酒もあんまりきらいやなさそうだし・・・。
寿美: 宝塚の子って、わりと強いんです。顔に似合わず。(笑)
雷蔵: 宝塚はもう何年・・・?
寿美: それいうと、年がわかる。(笑) ほんとは十年です。
雷蔵: それぐらいいたら、宝塚は、もういいんじゃないですか。(笑) こんなこというと怒られるかな。(笑)
記者: 寿美さんの理想の男性って、どんな人?光源氏みたいな人ですか?
雷蔵: ああ浮気じゃ、困るだろうね。(笑) 「英雄色を好む」なんていうが、むずかしいもんだ。「恋人の一人や二人できないようじゃしょうがない」などともいうけれど、そのぐらいの馬力のある男でなきゃダメだろうし、そうかといって、現実にそうなれば、奥さんは泣くだろうし・・・むずかしいな。(笑)
寿美: 恋愛結婚しても、男の人って、あとで、そんなトラブル(もめごと)をおこすんだから、いやーね。
雷蔵: 男の業かな。しかし、そもそも、恋愛と結婚は、別だと思うんだ。
寿美: あたしは、いっしょだと思うわ。恋愛を恋愛だけでおいておくなんて、そんなかなん(かなわない)ことないわ。(笑)
雷蔵: だって、恋愛だけで終ることだってあるでしょう。
寿美: あるけど、そんなん悲しいわ。
雷蔵: そういえば、きのう、恋愛の詩をきかせてくれましたね。もう一度聞かせてくれない。
寿美: 「恋がほしいの」っていう詩なんです。
− 恋がほしいの、あの人の恋が、 |
ただそれだけの 小さなのぞみ |
許されるならば 叶えてほしいの |
命のかぎり 愛させて − |
雷蔵: 男が聞いたら、いい気分になっちゃうよ。(笑) それに題がよろしいな。映画のタイトルにしたっていいよ。
寿美: 詩を作っているときって楽しいわ。
雷蔵: いつ作るの?
寿美: 舞台稽古やったりしてるとき、パッとひらめくとすぐ、メモをとっておくんです。作りやすいのは、失恋の歌。(笑) 初心者用ですよ。(笑) 詩のほうはとにかく、死ぬほどの恋愛をしてみたいわ。
雷蔵: こっちは、そんな恋愛したことない。(笑) 光源氏じゃないけど、つい知性と教養がじゃまをして、どうも恋愛ができにくい。(笑)
寿美: でも、そんな人が、恋愛したら、こわいんですってね。それに、結婚してから恋愛するタイプがあるでしょ。
雷蔵: 奥さんには申しわけないけど、男って仕方のない動物だよ。(笑) だけど、死ぬほど好きとか、死ぬほど惚れるって気持が分らないんだ。いったい、死んじまったら、なんになるんだ。(笑)
寿美: じゃあ、心中なんてことも、アホなことね。
雷蔵: これほどバカはないよ。(笑)
寿美: あたしも、そう思うな。(笑)
雷蔵: ぼくは、冷めたいのかな。よく別れ話でカーッとなって相手を殺したりするけど、ちっともその心理が理解できない。生きてることこそ大切なんだ。それに、女は、世界中に何億といるんだ。最上の女性は、そのほかにだって、きっといるはずだよ。
寿美: お互いに、最上の相手を探すってシンドイわね。(笑)
雷蔵: しかし、恋愛ができないなんて、ぼくは不幸な生れつきだよ。これが、ただ一つの不幸だ。(笑)
(週刊明星 61年9月24日号より)