対談 いいたいこといいA

責任が重くなる



一本立 はっきりする勝負

ー大映が六月一週から一本立興行になると、少しは体が楽になりますかね。

 雷蔵 現場の人たちはほとんどかわらないでしょうね。ボクの場合などは、一本立で大作主義だとなれば、この作品、あの作品にもちょっとずつ顔を出してくれなんてことになって、かえっていそがしくなるんじゃないか。それに、一本立封切となると、勝負がはっきりするだけに責任も重くなるし、記録映画と併映されると、劇映画の方が見おとりしないかと、それが心配ですね。

ーこれまで映画会社が、劇映画と記録映画とを一緒に上映しないのは、劇映画のセットがちゃちに見えてしかたがないからだ、などといわれていたくらいだ。

 雷蔵 なんといっても、相手が実物だけに画面が力強いですからね。

ーだから、一本立製作になったからといって、すぐに傑作ばかりが作れるわけではないが、まず、ていねいな作品を作るということからはじめるべきでしょうね。ところで、あなたは、現在まで何本くらい撮りました。

 雷蔵 大映へ入社したのが昭和二十九年で、その年に田坂勝彦監督の『花の白虎隊』がデビュー作品で、それから、いま、撮っている伊藤大輔さんの『ジャン有馬の襲撃』で六十本くらいになりましょうか。

ーカブキの舞台への未練はありませんか。

 雷蔵 カブキはいつ見てもいいなァと思います。だけど、ボクの場合、舞台をふんだのは終戦後の昭和二十一年十一月ごろで、十六歳になってからのことですから、未練を残すというほどの経験がなかった。もっとも、ボクは生後二、三ヶ月目から九団次という人の手で実の父親同様に育てられたものですから、カブキに縁が深かった。ほんの子供の時分から、いつも舞台横のミス内で舞台を見て育ってきました。だけど、映画も好きで、小学校一、二年生のころから『幽霊西へ行く』『汚れた顔の天使』なども見てきたし『風雲将棋谷』などで阪妻さんもよくおぼえています。