スポーツマン三人男

賀津雄 僕はなんでもやっているよ。それでみんな強いんだぜ。拳闘・相撲・野球・ゴルフ・ラグビー・柔道・スケート・スキーみんなやっているんだ。

雷蔵 一寸食われたね。だがね拳闘は僕だって強いんだぜ、いつか錦ちゃんを負かしたことがあったことを覚えているだろうね。

賀津雄 ああ、あの時は雷ちゃんはまるでむきになって向って来たから、兄貴も参ったらしいな。だが、次に僕が挑戦したら逃げちゃったじゃないか。

雷蔵 そうさ。君子危うきに近よらずさ、君は無茶だからな。

 相撲とスケートなら、一寸自信あるんだ。

雷蔵 それじゃ腰が強いんだね。

 ところが腰は余り強くないんだね。左り四つなら得意の体勢さ。

賀津雄 なあんだあ、腰が弱くちゃだめだよ。僕は双差しが得意だから、双になるや「さば折り」で勝ってしまうな。

 「さば折り」か、あいつは一寸苦手だよ。

雷蔵 それじゃあんまり強くなさそうだな。

 賀津雄ちゃん、腕相撲はどうだい。

賀津雄 よおし。腕相撲でゆこう。

(勝ちゃんと賀津雄ちゃんは、座談会を中断して、直ちに腕相撲の三番勝負を決行となり。勝さんが二勝一負で賀津雄君が負となる)

 どうだい一寸したものだろう。

賀津雄 大人だからな仕方がないさ、でもあんまり無理しなかったんだぜ。健康が大切だからね。

物騒な話

雷蔵 いま想い出したが、いつか君の家(錦之助・賀津雄宅)へ遊びに行った時、柔道のまねをして、賀津雄ちゃんか錦ちゃんに、首を締められて落ちたことがあったよ。落ちるって、好い気持ちなのだと思ったよ。

賀津雄 僕じゃないよ。たしか兄貴だったろう。落ちるって、ほんとうに好い気持なものだよ、僕も中学時代(暁星)よく靖国神社の境内で、喧嘩をやったもんだが、ある時、鼻っつらを、があんと一発やられて、落ちたことがあったので、その経験はあるんだよ。

 僕は人を落としたことはあるが、自分は経験ないけど、そんなものかね。

賀津雄プロのこと

雷蔵 賀津雄ちゃんは、この頃十六ミリに凝っているんだって−

賀津雄 本格的だよ。いまに賀津雄プロ作品を作る準備中だよ。移動車も作っちゃった。

 十六ミリ型の移動車かい?

賀津雄 撮影所のと同じなんだぜ。嘘だと思ったら、この間出た「映画ファン」の二月号に出てるのをみて呉れよ。

雷蔵 作品はどんな物を撮る積り?

賀津雄 まず「母の記録」っていう題で、お母さんの日常生活を撮って、まとめようと思っているんだが、めんどうくさがって中々撮らせて呉れないんだよ。次は僕のオリジナル・シナリオで「スリラー」物を撮りたいんだ、うんと恐い、ぞっとする奴を一発撮る積りなんだ。

 一人じゃ出来ないね。

賀津雄 そりゃあそうだよ。家中の人を全部集めてやるんだよ。忙しい連中ばかりだから中々進行しないんだ。

雷蔵 そんな人手のかかるものは困るね。賀津雄ちゃんだって、今年からは忙しくなるぞ。そうなると賀津雄プロの方は、残念ながら自然消滅の運命になりそうだな。

賀津雄 馬鹿いうなよ。どんなに忙しくなったって、十六ミリはやるよ、将来監督になる勉強にもなるんだぜ。

雷蔵・勝 いや恐れ入りました、その節はぜひ使っていただきましょう。

本誌 ありがとうございました。

(映画ファン57年3月号より)