勢ぞろいした大映時代劇の四大スター。左から市川雷蔵、長谷川一夫、勝新太郎、本郷功次郎。

 

似ている人

 雷蔵はよく、意気投合した相手に、

 「ボクはどうもセックスが強い」 とふざけるそうだ。

 「オレは日本一だよ」 と、とぼける勝新太郎に対して反動的になっているのかもしれない。

 それはともかく、彼の素顔はたしかにスクリーンのマゲをつけた剣豪雷蔵とは、似ても似つかぬヤサ男である。眼鏡をかけ、肩がうすく、声もやさしい女性的な感じである。 銀座のあるキャバレーで、

 「あら、あなたは雷蔵さんによく似てるわね」 と女給に言われ、

 「ああ、よく間違えられるんだ」 と、すましこんで、帰るまで「似ている人」で押しとおした経験もあるそうだ。

 また、去年の春、祗園の某女性を連れてアベックで上京のときの変装がふるっていた。

 太ブチの眼鏡をかけ、イキなジャンパー姿で歩き方をかえて、肩をゆすって歩いたそうだ。だから、道行く人は、だれひとりとして気付いたものがなかったという。よく会う芸能新聞の記者ですら、知らん顔をして行き違ってしまったそうだ。

 この話を聞いて、喜んだ勝新太郎が、 「オレもやってみよう」

 というわけで、さっそく大阪の町で実験に及んだが、彼の顔は特徴がありすぎるのか、すぐにバレでしまったそうだ。それほど、素顔の雷蔵とスクリーンの雷蔵とでは違う。