盲腸にもめげず・・・・

 人気スタアともなると、おちオチ病気もしていられないという気の毒なお話をご紹介しましょう。

 この気の毒なスタアとは、大映の若さまこと市川雷蔵さんです、去年の暮れからといもの、『大阪物語』『朱雀門』『浮舟』と息つく暇もない忙しさ、三本も大作なのにそれが並行して撮影しているのだから、たまったものではありません。

 その雷ちゃん、ちょっと具合が悪く医者に診てもらったら盲腸で早速手術しなければならないといわれました。とはいえ、撮影を休むわけにはいきません。窮余の一策、アメリカから高価な薬をとりよせ、一時的にバイ菌を散らして頑張っています。

 ところがこの雷ちゃんのライバルたる勝新太郎さんは、持前の器用さと強心臓で話題の種になっています。

 三味線の腕は天才的、歌ならジャズ、歌謡曲、長唄、清元はもとより、英語、日本語なんでもという器用人の勝ちゃん。先日、京都の南座で催された藤間勘五郎さんの踊りの会に、長谷川一夫、中村扇雀さん、大川橋蔵さん、市川雷蔵さんといった、踊りの名手が多数参加出演しました。

 これに交じって、いままで全然踊ったこともない勝ちゃんが、舞台を見事に踊ってのけたんですから、誰もがアッと驚いたのも無理はありません。