語る人

雷蔵マネージャー
森本房太郎
大映京都美術係
福山善也
大映京都宣伝課
徳田勝紀
大映京都スチールマン
西地正満

 

 

 「毒舌がすぎて舌癌になるわよ」と山本富士子さんにシッペ返しされた話、歌の先生が「まだ一回も雷ちゃんの歌を聞いたきとがありません」という珍勉強ぶりなど、かくされた雷ちゃんのエピソード集です。

 雷ちゃんと女性

福山 俳優の中では感心するほど、たかぶらん人ですな。

森本 でも実際もの言わずだからたかぶっておるように誤解される。

徳田 つまり社交性に欠けるんだな。

森本 そうそう。よくあれで役者なんかしているな、自分でそう言っている。

徳田 気心が知れてしまえばすごく一変して、ガタッとくだけるのだけれども、やはりそれにはちょっと時間がかかる。

森本 衣裳部屋へ来ておる洗濯屋の女の子にも、ワーッと追っかけ廻していじめておるというようなこともあるからね。

徳田 大道具の連中なんかは雷ちゃんを「ゴイチ」と、『炎上』のときのうすのろの名前が愛称になって二階から大声で呼んでる。(笑)

福山 しかし、毒舌家ですね。(笑)

森本 初めての女優さんなんか、たいがい物をよう言わん方だな。(笑)まあ山本富士子さんなどとは毒舌ではいい勝負だ。

福山 ハアハア。お富士さんなんか、雷ちゃんが毒舌をするよってに「舌癌にかかるわよ」と毒舌はいてる。(笑)

徳田 つかみあいしているじゃないかな。(笑)

福山 どんどん、どんどん部屋中駈け廻っておるわな。

徳田 同い年だ、愉快だな、二人のふざけた喧嘩はね。派手だよ、実際。

森本 阿呆、雷蔵の阿呆といって逃げて行きおる。(笑) 嵯峨三智子なんかも会うたら最初からしまいまで喧嘩みたようだ。若尾さんはどうもないね。お互いにお友達のようね。

福山 意気はよう合うのだろう。

森本 合うだろう。

福山 そういえばあれは毒舌は吐かんね。

森本 食事をともにしたのは若尾さんくらいじゃないかな。僕の知っている範囲では。あまり女優さんと食事をともにするというのはおそらくないでしょう。嵯峨三智子とあれだけ深くつきあったって、コーヒーを一しょに飲みに行ったなんていうこともないでしょう。

西地 御殿場へ信長を撮りに行ったとき、森監督と一しょだった、そのとき言っていたけれども、雷ちゃんは勉強もあまりしないように、ブラリブラリのんきにやっておるように見せて、あのとぼけているところがクセものだ、と。あれでやはり一番勉強しています。

徳田 「信長」の時だった、一カット五分十七秒の前の日にね、雑誌の仕事を頼みに行った。そうしたら「きょうはあかんで」とたった一言。翌日考えたら、その五分十七秒の大仕事が控えていたからだったのですな。恐らく帰って勉強したのでしょう。その日、その一日分の撮影量をみごと二時間でOKさせてしまった。