雷蔵さんと山本富士子さんは、どちらも人気スタアの代表選手だが、同時に人も知る良い喧嘩友達、寄るとさわると相手に逆らいたくなる衝動をおぼえるという宿命的なライバル同志が『人肌牡丹』以来、八ヶ月振りに『かげろう絵図』で顔が合うこととなった。そこでこの二人が初めて対面したセットで、相も変らぬ“云いたいことを云い”との対談がこの程、会の方に届きましたので、皆様にお知らせ致しましょう。

雷蔵: いやァ、山本さんとは随分逢いませんでしたね。

山本: ええ、本当に御無沙汰致しまして、そうえいば、この春、ブルーリボンの授賞式以来でしたかしら?

雷蔵: そうですよ。あの時は、山本さんも『情炎』のアップ間際で、大変疲れた表情でしたが、今日はあれから較べると、見違えるほどお元気で、(語気を強め)お美しくって・・・。

山本: (笑)そうでしょうか。とにかく一週間ばかり前までは、疲労コンパイの極だったのよ。

雷蔵: ボクも、今年の前半はわれながらよく続いたと思うほど働きましたよ。ひどい時は三本ダブリで、それが更にA班B班に分れているというようなこともあってね。これで雑巾ならとっくにスリ切れているところですな。(笑)

山本: 私もよ。

雷蔵: 大映の一本立もだんだん軌道に乗って来て、これからはお互いに少しは楽になってくるでしょう。物を考えるひまも出来るだろうし・・・。

山本: そうならなくっては、一本立の意義がありませんわネ。

雷蔵: さしずめ、こんどなんか、撮影日数がたっぷり取ってあるので、急に暇が出来た感じで、身体をもてあましていますね。何か東京の現代劇に一本出てもいいと思っているくらいですよ。