山本: まあ、雷蔵さんはファイト満々ね。今度は又初めてのダブル・ロールでしょう。これが又、変化物以上に大変なのよ。

雷蔵: ボクもダブル・ロールは『桃太郎侍』なんかでやったけど、シンが疲れますね。

山本: 富本節の師匠と、武家娘の女スパイだからこの二人の性格をしっかり頭に入れて、ガラリと変った感じを出さなくちゃと思っています。

雷蔵: ボクのやる島田新之助というのは旗本の次男坊、ボクのデビュー当時からよくやって来たものだし、ボクの次男坊もここまで成長したというとこを、この映画で見てもらうつもりです。立廻りなんかもこれまでとちがった「やわら」を利用した型で行きたいと思っています。

山本: 相変わらず、とってもお強いのね。

雷蔵: 相手の力を利用して投げ飛ばす・・・いわば合気道の達人なんでしょうな。とにかく、今度はボクが出るとほとんど立廻りなんだから、やっていても気持がいい(笑)

山本: 私の方は残念ながら(笑)あまり立廻りがないらしいですわ。

雷蔵: じゃ衣笠先生に頼んで、立廻りのシーンをこしらえて貰えばいい。ボクから云っておきましょうか、山本さんが「時代劇出ても立廻りがないと張り合いがない」って云っていましたよ、と。

山本: いいえ、とんでもない。そんな事になったら大変よ、二役をいかにこなすかに精一杯なんですもの。

雷蔵: ボクと関係のあるのは、姉の豊春さんだけど、あまりイジメないで、よろしくお願いしますよ。

山本: アラ、イジメルのはいつも雷蔵さんの方よ(笑)。腕力じゃとてもかなわないんだから(笑)。

雷蔵: その代り、口の方では、やはり山本さんにやりこめられるでしょうな。あの女性特有の意地悪さで。

山本: まア、ひど、意地悪だなんて・・・でも仲良くやりましょうね。恋人同士なんですもの。

雷蔵: はア、どうぞ、お手柔らかに(笑)。

山本: こちらこそ、どうぞ(笑)。

次回作

 『半蔵門の決闘』 森一生監督、勝新太郎さんと共演。十一月四週封切。原作は五味康祐「薄桜記」の映画化です。

 作品及び封切日は会社の都合で変更になる場合もありますので、御了承下さい。又、地方により封切日が違う場合もありますので御含みおき願います。

(よ志哉13号より)