特集★ケイバ人生

われにウマあり

“空想競馬”できたえた 

映画俳優・市川雷蔵

 いま一年のうち競馬場で馬券を買うのが二十回。場外で買うのも二十回くらい。競馬場では下見所に行き、じっくり出走馬を観察し、自分の目で納得した上でマークした馬を中心に流すが、一レース十万以上をかけることはめったにない。場外の場合は、いわゆる三点ばり、四点ばり(三とおりまたは四とおりの馬券を買うこと)だが、この方は買う枚数は少ない。「馬券で財産をつくったものはない」といわれるように、雷蔵さんのこれまでの収支決算も「中央競馬会や大蔵省に献金しているようなもの」だそうだ。

 「もともとカッとくる性質の男ではない」という雷蔵さんだが、自分の持馬が出るレースになると万難を排して見にいくことはもちろんのこと、そのときだけはカッと興奮してわれを忘れるそうだ。

 「馬主になってからの競馬はいちだんと奥行が深くなりました」という。そして持馬が出場する一週間前になると必ず優勝する夢をみるそうだ。それも本場のダービーで持馬の手綱をとって表彰されている夢までみるのである。(アサヒグラフ 69年1月10号)

 

雨の日、合羽を着て散歩するビレイゴ。雷蔵さんもいっしょについて歩く。

愛馬のあらゆる動きを見つめているところは馬主の貫禄十分だ。