あと二年くらいで結婚や 雷蔵の弁
U子さんが、そろそろ夜の“祈りの床”につこうかというころ錦ちゃんのライバル市川雷蔵をかこんで、明るい笑い声をはずませている三人の若い女性があった。
一月十日夜。場所は、ある銀座の料亭の一室。幸運な三人の雷蔵ファンは、B・GのA子さん(21)、高校生のB子さん(17)、同じく高校生で後援会会員のC子さん(17)。以下、録音テープを巻き直して、座談の模様を速記してみると・・・。 |
雷蔵大いに語る |
−1月10日、左からC子さん、A子さん、雷蔵、B子さん
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雷蔵 | (女中さんにビールをついでもらいながら、B子さんとC子さんにむかい) あなたがた、未成年 |
なんでしょ。 | |
B・C | (ちょっと固くなり、だまってうなずく) |
雷蔵 | (女中さんに) ジュースもってきてあげて。(と、そんなファースト・シーンからはじまって・・・) |
みなさん、ぼくの作品では、現代劇と時代劇、どっちが好き? | |
A・B・C | (一斉に) そりゃ時代劇だわ。 |
雷蔵 | ふーむ(と、ちょっと残念そうに)“炎上”は見てくれなかった? |
A | 見たわ。“炎上”って炎に上るって書くんでしょ?(爆笑) |
C | 私も見た。オヤといっしょに・・・ |
雷蔵 | え、オヤって・・・? |
C | オ、ヤ・・・お母さんといっしょによ。 |
雷蔵 | オヤオヤ、親のことか(笑)このごろの若い人って、変った言いかたをするんやなあ。(と、そんな |
談笑のうちに、話は次第に近づく) | |
C | ファン・レターは、お読みなりますか。 |
雷蔵 | 読みますよ。評論家が気のつかんようなことを教えてくれるし、とても参考になりますからねえ。 |
B | 中には、面白いのもあるでしょうね。 |
雷蔵 | ええ、ぜったい結婚せんといてほしいというのもありますよ。 |
A | 私もやっぱり雷蔵さんには当分、独身でいてもらいたいわ。 |
雷蔵 | どうしてですか。ぼくだって適齢期なんだから、人並みに結婚しなきゃいけないでしょうに。(笑) |
C | 雷蔵さんは、あと何年くらい適齢期が残っているとお考えなんですか?(笑) |
雷蔵 | ぼくは今が28だから・・・29、30(指折り数えて)・・・やっぱり、あと二年くらいやなあ。家へ帰って |
オヤジ(市川寿海)の顔を見ると、はよう初孫の顔を見せてあげなきゃと思う。たいへん月並み | |
な言いかただけど・・・ | |
A | そうかなあ、雷蔵さんが赤ちゃんを抱っこしたところ、想像しただけでも悲しくなるわ。(笑) |
雷蔵 | あなたを前にして悪いけど、結婚しないでくれというファンは、人間的にすこしおかしいんじゃな |
いかしら。そう思いますね、ぼくは。 | |
B・C | (顔を見合わせながら) 私たちは、スクリーンの雷蔵さんさえイイ感じなら、それでシアワセよね |
え。だって、結婚は個人の問題であって、俳優の雷蔵さんとは関係ないことだもの。 | |
雷蔵 | (独特の皮肉な口調で) まったく、その通りなんだ。そういう物のわかりのいい人ばかりだとあり |
がたいんだがなあ。しかし残念ながら、ファンの九割以上はそうじゃないんじゃないかな。悲しい | |
ことだよねえ。 | |
B・C | あら、そうかしら。 |
雷蔵 | むろんぼくは、そう思いたくありませんよ。ぼくが結婚したらキライになるなんて言う人には、ファ |
ンをやめてもらってもいいと思うくらいです。俳優は出演料をもらって映画に出る、お客さんはゼ | |
ニを払ってそれを見てくれる、そういう割りきった関係でいいんじゃないかしら。百何十円払って | |
映画館へ入れば、そこで市川雷蔵がチャンバラをやっている。(笑) | |
A | いやーだ、そんな・・・。 |
雷蔵 | とにかく、キザな言い方かもしれないが、立派な配偶者を得て、立派な家庭を築き、立派な仕事 |
をする、これが社会人としての役目だと思う。 | |
B | だけど・・・いざ雷蔵さんが結婚しようとしたとき、会社から邪魔が入ったらどうします? |
雷蔵 | ぼくには、まだそういう経験がないから、よくわからんけど・・・いったい会社に、そんな権利があ |
るんやろか。 | |
B・C | ないわよ、ないわよ、そんなのケンポー違反よ。(笑) |
A | でも、結婚すると人気が落ちるって、よく言われるわね。 |
雷蔵 | 残念ながら、そういうことかもしれんなあ。しかし、結婚したら落ちるような人気だったら、はじめ |
からないほうがましだねえ。そんなのはウソの人気や。そう思わない? | |
A・B・C | (黙ってうなずく) |
B | 裕ちゃんなんか、もっと人気に自信をもって、はっきりした態度をとればいいのにねえ。 |
雷蔵 | 石原裕次郎氏は、北原三枝君と結婚する意志がないんじゃないか。だから、ああいうぐあいに |
アイマイな態度でいるんだと思うな。こんなことを、ぼくの口から言うのはおかしいけど・・・(いた | |
ずらっぽい表情で)しかし、ああいうアイマイな態度こそ、もっとも男らしい態度ともいえるだろうな。 (爆笑・・・だが、こうした“男の友情”の言葉の真意が、よく女性ファンに通じた、どうか?) |