一本立ては理想的だが

雷蔵 いま、なに演ってるの?

橋蔵 “紅顔の密使”やっぱりスペクタクルでね、雨、風、嵐、あらゆる天然現象がミックスされてるの。

雷蔵 もう手がないんだね(笑)うち(大映)でもそうや。もっとも表面はそうでも、なかにつらぬくドラマさえしっかりしてればね・・・。

橋蔵 問題はそこだ、本筋のシンさえあれば・・・。

雷蔵 アメリカ映画ではその点でもドラマになってるし、金もかかってるし、なにより人間と人間の間を深く抉ってるもんな。

橋蔵 (頷いて)このごろ忙しいから余り見てないけど、久しぶりで見た“お熱いのが好き”。面白いね。

雷蔵 ドタバタなんだけど、楽しいよ、女装なんかでも・・・。

橋蔵 気にならなかった。女装てェの、僕には別の興味があったけど、なんかアクがないし、自然だし。

雷蔵 ユーモアと、洒落っ気があって羨ましい、日本じゃ考えられないね。

橋蔵 あれ、だけどお金かかってないよ。構成とアイディアだけで作ってある。大映、どうなの、一本立?

雷蔵 理想は絶対に、一本立なんだけどね。

橋蔵 そうサ。うちはバカに忙しいよ、今なんか、七、八本オーヴァラップしてる状態。二本立とか一本立とか言っても、会社々々の客層が違うからね、東映のカラーは地方の館を中心に作られたものだし、会社の考え方の違いだもの、どちらとも言えないね、これは。でも、うちはずっと二本立をやるよ。経営組織がそうなってるから。

雷蔵 ビクともせんだろう、大川さんの映画自体の考え方がそうなんだから。

橋蔵 うん、うん。それからこのごろの映画、随分お色気がふえたねェ。大衆が好むのかしら?

雷蔵 そうでもないやろ。昔もあったらしいよ。

橋蔵 “恋人たち”の刺戟ってのもあるやろうなァ。

雷蔵 日本人はオッチョコチョイやからなァ。

橋蔵 後味のいいものならいいけど・・・。