東京へ行かにやァアカン

雷蔵 君、“新吾”はまだまだ続くの?

橋蔵 うん、まだまだ。だけど僕は今年、長いのばかりやってるから、仕事の本数は多くないよ。

雷蔵 僕は七本。

橋蔵 カセぐねェ。家が二つ、三つ建つんじゃないの?だけど、仕事はダブるといかんね。

雷蔵 人間には限度があるもん。

橋蔵 スーパー・マンじゃないから、精神的に神経がまいるよ。

雷蔵 だけどまた、一本だけだと退屈だよ、もう一、二本でたいくらいや。(笑)

橋蔵 コワいなァ。

雷蔵 もう、カセがにゃァ。(笑)

橋蔵 そう割り切られちゃカナわないなァ。(笑)雷ちゃん、東京行ってる?

雷蔵 二月に一遍くらい。

橋蔵 僕、全然行けないんだ。三日も休みがあればねェ!

雷蔵 そりゃア君、行かなきゃいかんぜ。銀座なんか歩いて、見たり、きいたりしていると、新しい感覚を思い出すんだな、そんなのたまに仕事にも使えるぜ。目的があるようでないようで、行くのもいいもんだよ。

橋蔵 先月後援会で行ったきり。・・・日帰りだから忙しくって。

雷蔵 そりやァアカン。(ジッと橋蔵さんの顔を見て)だけど、君そんなに忙しくても、相当楽しそうじゃない?(笑)

橋蔵 どうして?買ってる株が上ったからかな。(笑)雷ちゃん時々おかしいこと言うね。(笑)でも、忙しい方がいいぜ。

雷蔵 でも人間は考える動物だからね、ヒマがないのは悲劇や。

橋蔵 ヒマっていってもさ、メクラメッポーじゃなくてさ、適当にヒマがあることよ、全然のヒマなんて困るもん。

雷蔵 ああ、そういう意味か。

新しくって現代向き

橋蔵 (あらたまって)雷ちゃんて、羨ましいなア。

雷蔵 なにがさ・・・。

橋蔵 なにがって、雷ちゃんがさ・・・。映画へくる前から雷ちゃんを知ってたけど、そのころ性格をそんなによく知らなかったけど、同じ仕事をしてると、ものの考え方が実に近代人なんだな。

雷蔵 ドライ?(笑)

橋蔵 いい意味でのドライ。

雷蔵 じゃア、悪い意味では?(笑)

橋蔵 そんなのないよ(笑)。割り切ったものの考え方とかサ、言わんとしてることから考えてることとかが、僕もそういう風にしたいと思うんだ。雷ちゃんの立場が羨ましいんじゃないよ、つまり新しさだな。

雷蔵 ハァー(笑)。じゃア具体的にはどこで感じたの?(笑)

橋蔵 そう言われても、どこでどうって分らんけどサ、ああ雷ちゃんにはこんなとこあるんだなってビックリしたことあるよ。

雷蔵 ハァー、黙ってきいてるよ(笑)。

橋蔵 仕事に対する冒険心ていう偉大な長所があるもん、僕は冒険したくてもできないし。・・・羨ましい!

雷蔵 分らん(笑)。

橋蔵 分らんじゃないよ、そういう性格やという話や(笑)。話してるうちに分るよ。

雷蔵 じゃア話を続けよう(笑)

橋蔵 今も雷ちゃんに紹介してもらった洋服屋が来てたんだけど、洋服屋が来る度に、雷ちゃん今度どんな服作ったって、きくことにしてるの。雷ちゃん、洋服でもスタイルがどんどん変ってサ、当然なんだけど、タッチが一定してないけど、実にヴァラエティに富んでる。そんなことにもよく性格があらわれてる。近代的センスに合ってるの、うまく言えないけど、なんてェのかな。・・・行動的、そう、行動的なの!

雷蔵 僕は消極的なんだぜ(笑)姓名判断なんか気にしちゃってひとりで思い悩んでるや(笑)

橋蔵 思い悩むような人かいな。(笑)僕に雷ちゃんお冒険心の半分もあったらね。