どっちがどっち?

雷蔵: それもある(笑)だけどな、もう二人ともこの商売やめられんな、身についてしまっとる・・・。

錦之助: 子供の頃は電車の車掌になりたかったよ(笑)

雷蔵: でも幸せだとぼくは思うとるわ。

錦之助: それはぼくだって同じさ、とにかく好きな道でやって行かれるんだから、こんな幸福なことはないものね。

雷蔵: ぼくら、趣味と職業がつながっているから・・・映画撮って出来上った時の喜びって、ちょっと金では買えん喜びがあるからな。

錦之助: だけどな雷ちゃん、君もぼくも地味好きだろ、よくこの商売が出来ると思ってね。いつも自分ながらびっくりしてるんだ。

雷蔵: 君は泣き虫だしな(笑)

錦之助: 雷ちゃんは、引っ込み思案だしね(笑)

雷蔵: だがな、君はソートー我がままやで・・・(笑)しかもだな、酔うとそれがひどくなる(笑)気イつけんとあかん(笑)

錦之助: そこへゆくと雷ちゃんは・・・。

雷蔵: わしか、ぼくはだな沈着、冷静、なおかつその上に大胆・・・(笑)

錦之助: ちょいとオーバーだな(笑)

雷蔵: そうなんや、じつは一枚うらをかえしますとや、えらい照れ屋というのが、すなわちぼくさ(笑)

錦之助: ぼくだってじつは同じなんだよ。

雷蔵: ぼくな、先刻の話ではないが、東京に行くと必ず君の家へ行くやろ、あれなんでやろと考えたことがあるんや。

錦之助: おみおつけ、おしんこだろう(笑)

雷蔵: それはまた別や(笑)ところがなわかったんや、ぼくはふだん一人で孤独のせいなんだよ、君の家の一家が十人居る、不思議やね、その十人が十人ともぼくとウマが合う。

錦之助: 家でも皆んながそういってるよ。

雷蔵: それに錦之助っていうケンカ相手もいるしな、ゼッタイにこれなら退屈せん(笑)

錦之助: まいどおおきに・・・ありイ(笑)

雷蔵: どうもな、ぼくちゅう男はやな、小川家に生れるべきを間違えて生れて来たんじゃないか(笑)−そういう気におそわれて仕方がないんや。

錦之助: 雷ちゃん、そらいけないよ、したら大変だ、毎日ケンカばかりして、二人とも勘当されるのがオチだ(笑)