張りつめた気迫に打たれる

　ところがバカに出来ないのが映画というもののむずかしさだ。はじめてステージを訪ねた人でも、思わずそのピンとはりつめた気迫に胸を打たれるだろう。監督の命令一下、五十人、百人のスタッフ一同が寸分の狂いもなく動いて行く、

　野球の場合でもこれほどに監督の意向というものが、ナインに深くしみ通れば、勝利も決して夢ではなかろう。しかも聞いてみると、とくにここは大事なシーンだから、失敗を犯さないようにというふうな監督からの通達がほとんどなされず、各自がシナリオを読んで、その重要性を認識するということだ。野球の場合、もちろんここ一発で点が入るというケースでは、緊迫するにはするが、それでもスクイズの失敗とか不用意な失投が出てくることの多いのに比べると、何か考えさせられるものがあった。