私やあなたの恋女房

(市川雷蔵)仲よし青春対談(嵯峨三智子)

・・・盲腸手術のやつれもみせず市川雷蔵は、仲よしの嵯峨三智子と大映「二十九人の喧嘩状」(監督安田公義)に元気な姿で出演している。

 考えてみると、似合いのコンビが顔を合わせるのは昨年の十月に撮った「あばれ鳶」以来六ヶ月ぶり、「一緒にお仕事したかったわ」「ぼくもほんとに・・・」とピッタリ意気を合せた二人に青春対談をして貰った−

三智子: 憎らしいたらありゃしない。さぞ意気消沈してるだろうと思ってお見舞いに行ったら、ケロリとしているんだもの。

雷蔵: いそいそとかけ足で来たのにねぇ-(笑)

三智子: バカねえ-(笑)私が盲腸を切ったとき、こじれて長くかかったので心配だったのよ、順調すぎて現代医学の有難味も人の気持ちも分んないのよ、あんたは−まあ、こんどは久々の顔合せだし、病後だからカンベンしてあげるわ。

雷蔵: みっちゃんとこんど仕事してみて-ずい分うまくなったし、人間としてもグット成長したね。お色気にグロッキー。

三智子: またまぜっかえす、去年のようにいじめるよ。

雷蔵: やめてくれよ、それこそ盲腸がこじれちゃう(笑)考えてみると、去年は完全にみっちゃんに圧倒され放しだったねえ、何しろお母さんゆずりの演技のスジがいいのと、お色気があるんだから、ぼくが食われちゃうのも当たりまえさ、だけど、今年はこっちがみっちゃんを食っちゃうよ。

三智子: 今度の吉良の仁吉って役、雷蔵さんにピッタリね。

雷蔵: みっちゃんて案外オットリしていいとこあると思ったんだけど、六ヶ月会わない間に鋭くなって、近寄りにくくなったよ。

三智子: 何とでも、わたし決心しちゃったから。

雷蔵: 何をさ。

三智子: 雷蔵さんのいうこと何でもハイハイってきくことに−

雷蔵: ヘエ、どうした風の吹き回しなんだろうねえ。

三智子: だって私あなたの恋女房役ですもの。(57年7月発行 寿会々報No.5 より)