よかった『炎上』出演
シンのある役にとりくむ

◇・・・・・そのためでもないでしょうが、おかげ様で去年は“よくやった”といわれた一年でした。自分ながら悔いのない一年でした。ボクが自分自身で思うのは、やはり『炎上』に出たことがよかったのですね。あれは一年ほど前から市川崑監督がいって来られたのですが、みんなが反対しましたね。十人のうち九人までが反対。とくに京都撮影所では全部反対。オレたちがせっかく苦労して育てたスターを何で坊主頭のドモリにせんならん、というわけです。でもヤリたくて、永田社長に話したところ賛成してもらえたのです。ほんとにたった一人の賛成者でした。

 とにかくこれからはスターもはなやかな役ばかりではなく、シンのあるものに出なければいけないのじゃないですか。石原裕次郎君だって田坂さんの本格作がきいているし、山本富士子さんだって『夜の河』や『彼岸花』の力が大きいですよ。

◇・・・・・そういう本格作出演を求めるとなると、どうしても俳優自身の熱意の問題になりますね。こんどは西鶴の『好色一代男』をねらっていろいろ努力しています。これは『炎上』のときよりは反対が少ないようですね。(笑)世之介の世界は、あれは要するにあの時代の慎太郎ものですね。まさに輝ける青春ですよ。(01/04/59付夕刊切抜より)