歌舞伎復帰の噂

雷ちゃんの周囲にはいま舞台復帰の噂がもち上っています。真相は別として、半年ぐらい前から事実その話しが進められていたことは本当のようです。

映画に入って満三年余り、芸道一筋に精進を続けてきた雷蔵さんはいまや押しも押されもしない青春時代劇スタアのナンバーワンに数えられる人になりましたが、ここらで養父寿海さんはじめ関西歌舞伎の関係者たちが舞台復帰を考えるのも無理からぬところです。月に一、二度撮影の合間をみては、伏見にいる養父母の家を訪ねることを何よりの楽しみにしているというほどの、実の親子も及ばぬという孝行者の雷蔵のことですから、九団次夫婦もすでになくなった今、父とよぶにはこの人以外にいないその寿海さんのたっての希望を映画の方が忙しいからという理由だけむざむざと退けることはできないでしょう。年老いた養父の元気な間に、出来れば一日も早く歌舞伎に復帰して、晴れて親子共演の舞台を実現させることが、何よりの孝養であると考える雷ちゃんの心痛は、人の子としての共通の悩みでもありましょう。

この辺りにも雷蔵さんの人柄がしのばれて、私たちにもその心の中がわかるような気がします。しかし何事にも慎重そのものの雷ちゃんのことですから、この話をそう簡単に片付けてしまうには余りにも問題が大きいようです。