てんてん娘の京都撮影所

てんてんめぐり

みなさん、コンチワア・・・あたいね、すごい、ショック旅行にでかけましたの。いつもは宮城まり子さんの、てんてんちゃんが、テレビに、映画に、舞台にと、とびまわっていますが、こんど平凡編集部から、京都の撮影所を見てつづり方をかけとのお話があったの。ノウマしい春!ノウマしい男優さん女優さんワンサといる撮影所!一も二もなくオッケイして、口入やのおじさんに、おひまをもらい、一日見学にとびたちました。

☆几帳のかげで「ラブ・ミー・テンダー」

京都駅から、まず最初に、かけつけましたのが、大映京都撮影所。衣笠組の『源氏物語・浮舟』のセットにとびこみました。日頃の精進のよろしいせいか、今日は、長谷川一夫、山本富士子、市川雷蔵という、いわゆる美男美女の顔合せです。衣笠監督の高い調子の「ヨーイ、スタート!」の声とともに、色美しい調度、衣裳につつまれて、王朝時代の、優雅撮影がはじまりました。

「のう浮舟どの」

と澄んだセリフの雷蔵さんの匂の宮が、富士子さんの浮舟となにやらお芝居をしているのですが、立ててある几帳のかげなので、あたいのところからは、よく見えないの。ほんとにじりじりしちゃった。ライトの位置をなおす一寸の休みができたので、そっと几帳に近づいてのぞきこもうとしたら、光源氏の子供の薫の君に扮した長谷川一夫先生が、れいの流し眼で、

「てんてんちゃんは未成年でしょ。見ないほうが、よくなあい」

ですって、ほんとだ、几帳の裂けめからチラット見えたこのシーン、まさに、三升釜のご飯を、まっ黒こげに焦がしたような大ショックでした。雷ちゃんがお富士の君をやさしく抱いて、可愛いあごに手をそえて、

「ラブ・ミー・テンダー」

かっかっかっと心臓が口からとびだしそうになったので、セットとも、大映撮影所ともバイバイして、近くの東映撮影所にふっとんで行きました。