苦心の変装でヨウヨウと雷蔵邸に化けこんだのはいいけれど、さてそれからが大変です。野球場から街へとびだした雷ちゃんの行くさきは?

お部屋の窓から裏山をながめる雷蔵さん

☆雷チームの総監督

さて雷蔵さんのお宅では−玄関に出て来た森本さんがボクの顔を見て、「何や、あまり見かけんお手伝いさんやな」といいながら気にもとめないようす。シメシメどうやらうまくいきそうです。そこへ『炎上』で坊主にした頭をなでながら、当家の御主人雷蔵さんが現れました。

「商売商売!ボンヤリしてたらあきまへんで−」つい見とれていると後の方から洋服屋さんの声が飛んで来ました。

「なかなかええ色やないか」新調のグレイのユニフォームを早速着てみながら雷蔵さんはゴキゲンの様子。

「どや似合うやろ」背番号は30で、もちろん監督です。

「なかなか、よろしおますなあ。やっぱり着手がよろしいと・・・」さすがは洋服屋さん如才がない。が、

「坊ちゃん、こりゃどうしても試合に勝ってもらわなユニフォームが泣かはりまっせ」と森本さんは痛いことをいいます。

「今日の試合何時やったかな」
「十二時でんねん。朱雀グランドです」
「ほな、もう時間あらへんやないか。早ようお茶漬けのしたくして。すぐ出なあかんわ」

雷蔵さんは大あわてで食事をはじめました。

ボクも雷蔵邸を出ると洋服屋さんに別れをつげ、車を拾ってブブブーとグランドへ。どこから聞いて集まったのか、ベンチのまわりにはもう女の子のファンたちが一パイです。雷蔵さんはまだかいナと背のびをしていると、

「おや、洋服屋さんやないか」ポンと背を叩かれうしろをふりむくと森本さんの顔が笑っていました。

「仕事はもういいの?」 「ええ、まあ・・・」

とつぜんキャーッとかん声が上がったかと思うと雷蔵監督が眼鏡をひからせて御到着です。試合はもうはじまっているのに、監督があとから到着するなんて余裕シャクシャクです。

「すべるのが惜しいなあ。ユニフォームが汚れるから」とはなかなかエレガントな野球です。

「キャーッ雷蔵さんこっち向いてッ」 「打ってネッ、ホームラン」

黄色い声援をあびて、いよいよ雷蔵監督自らピンチヒッターに登場です。

八そうのかまえで敵の投げるスピードボールをエイヤッとばかりに一せんすればセンターをオーバーして外野の塀へ・・・

といけばよいが相手のピッチャーもさるもの。ボールに唾をつけてこねてつくった出来たてのおだんごのような球をピューッと投げて三球三振。ファンのくやしがること。

それでも試合は12A-3雷蔵チームのあっとう的勝利でゲームセット。

「坊ちゃん、どうされます。これから」と森本さん。

「そうやな、久しぶりの休みやから河原町でもブラブラして帰るわ」と雷蔵さん。

それではボクもそうしましょうとあわてて雷蔵さんの車を追いかけます。車は四条へ出てそのまままっすぐ烏丸から河原町の交叉点へ。