−京都の撮影所で拾った−

 雷蔵がこのところ急に忙しくなった。『眠狂四郎女妖剣』に入ったうえ、本郷功次郎の後見役を引き受けたからだ。

 本郷は既報のとおり故佐田啓二の代わりに九月の大阪歌舞伎座「お吟さま」に出ることになったが、何しろ舞台にかけては知識も経験もゼロ。ひとりで心細がっているのを見かねて「わからんところは何でもきいてくれ」と指南番を買って出たわけ。

 舞台げいこと初日にはもちろんつき合うが、六年前にデビュー以来ずっと面倒をみてきた本郷の初舞台とあって「まるでわが子がデビューするときみたいな気持ちや」とうれしそう。

(『東京タイムス』昭和39年8月23日号より)