《久しぶりの》
《股旅 もの》

病後、といっても心配することがない盲腸ですが・・・雷蔵さんのとり組む作品は、安田公義監督の「二十九人の喧嘩状」です。勝新太郎さん、林成年さん、黒川弥太郎さん等が、颯爽と清水二十九人衆に扮し、雷蔵さんは吉良の仁吉に扮して久々に斬ったはったの渡世人生活をファンにおめにかけようというわけですが、その製作意図は、「義のため、愛する妻を離別して、決然荒神山に殴り込む颯爽吉良の仁吉の苦衷と若き妻の切々の愛情。若き仁侠の群が醸し出す正義と恋と涙の一篇として製作したい」ということであり、愛妻おきくにはおしどりコンビとして「美男剣法」から「あばれ鳶」まで六本の共演ですっかりお馴染みとなった嵯峨三智子さんが予定されているのです。

東映の錦ちゃん、千代ちゃん、橋蔵さんといった若手の時代劇スタアも口を揃えて、

「チャンバラは面白いぜ、ちょっとしたいやなことがあっても、撮影で立廻りをやっていると、すっかり忘れちゃうくらいだよ」

といいますが、雷蔵さんも立廻りが大好きですが、このところすっかり立廻りには御無沙汰で、久しぶりに斬りまくることがきまった彼氏、

「さて盲腸を切ってサッパリしたら、大暴れに暴れまくるぞ!」と大張り切りです。

さてそれではいよいよお仕事の話とはあいなりましたが、久しぶりに股旅ものを撮る雷蔵さんは、勿論時代劇に大いに魅力を感じてこの道をめざしているのですが、彼は彼なりに現代劇にも心を惹かれています。

「千代ちゃんが出たり勝ちゃんが出たりするから僕も現代劇に出たいっていうわけじゃあないんだぜ。映画を見てくださるファンが違うから現代劇はむずかしいと思うし、また、演出方法とか定石が違うからやりにくだろうと思うけれど、何事も勉強の意味でやってみたいな。時代劇と現代劇では芝居の間が違うから、何かまごついてしまうだろうけれど、現代劇の雰囲気で違う演出方法の監督さんに指導してもらえたら、何か得るところがあるんじゃないかな?」

と語る雷蔵さんは、現代劇にも激しい意欲を燃やしているのです。

「一、二本出てみたいから、何か適当な作品があったらお願いしまる、って申し込んであるんだけれど・・・」とつけ加えてくれました。

「薔薇いくたびか」というオール・スタア・キャストの東京作品で雷蔵さんの現代劇に一度だけおめにかかったファンの皆さんも、この成長した雷蔵さんの姿をもう一度現代劇のスクリーンの上で見たいという希望をお持ちでしょう。早くその日が来るとよいのですが・・・。