《映画を見て、本》
《を読んでと・・・・》

宝塚から映画界入りした大映時代劇のホープ浦路洋子さんに「ビキニちゃん」というペット・ネームをつけてニキビに悩む浦路さんをからかったり、「朱雀門」で共演した若尾ちゃんに、

「口が悪いとはきいていたけれども、ききしにまさる悪口ぶりね」

と云わせたほど、雷蔵さんは毒舌家で有名です。そうかと云っても、相手が怒ってケンカするほどの悪口でもないのですが・・・。

或る人が云いました。

「一日中雷蔵さんの後についていごらんなさい、仲々ハッキリした事を云ってのけるし、また、洒落た事を云うよ」

と。いうなれば雷蔵さんは江戸ッ子的な景気の良さと、何事も自分の思った通りの事をズバリズバリと云い切る一面があるのです。そうかといって、人を怒らせるような本当の意味の悪口は云わないのですが・・・。

誰からも好かれ、誰からも愛される雷蔵さんの毎日は、こうして冗談も云い、明るく仕事をする毎日なのです。

機嫌の良い日には、家でも女中さんを相手に冗談を云い、女優さんを相手に恋愛論の一席もたたかわそうというのが彼の良さです。

「映画はよく見るぜ、評判の映画はかかさずに見るね」

と仕事と娯楽の二刀流としてひまを見付けて映画館に通う雷蔵さんは、何かしら身につけようと勉強の意味でも名画を観賞しているのですが、これと同じように、読書にもはげんでいらっしゃいます。評判小説から講談本まで、我が家の書斎につまれた本を片っぱしから読んで、教養と娯楽と仕事に直結させているのです。

映画を見て本を読んで仕事をして・・・これではどんな機械的な人間でも参ってしまいます。適当に気を抜く、という事がなくては仕様がありません。

「健康第一、何事も健全な肉体の上に立脚する」というのが雷蔵さんの持論なのですから、この点も大いに気をつけています。愛犬次郎と共に朝の散歩で英気を養い、ひまがあればキャッチ・ボールやゴルフで健全な身体を作っているのが彼の健康法のようです。

第二の長谷川一夫さんとして、益々、演技力と、人気と、円満な人格とを備えつつある市川雷蔵さんの明日は、大いに期待出来るものがあります。

雷蔵さんのお家の応接間には、一ファンから贈られた赤ん坊の雷様の人形が飾られ、雷蔵さんの生活を見つめていますが、この人形の美しさ、溌剌さが永遠であるように、私達の雷蔵さんも永遠であれとは、雷蔵ファンの誰もが祈っていることでしょう。

愛犬を連れて歩きなれた散歩道!こころよい陽光に樹々は緑に輝き、空には初夏のきざしを感じさせるような白い雲が浮んで・・・雷蔵さんの愉しいひとときです!

「久しぶりの休みなんだから、お芝居でも観に行こうかな」と雷蔵さんは、お召し替えの後、颯爽と京の町へ消えて行かれました。愉しき休日のスナップ。