ジャジャ馬的でなくなって

雷蔵 時代劇にしてもだね、もう少し洒落ッ気があってもいいと僕は思う。ヤクザ物でももう限界に来た 感じですね。判で押したようなものなどと、週刊誌などの短評に書いてあるけど本当ですね。とくにヤクザの英雄化はイカンと思う。

嵯峨 私なども時代劇だと何時も同じような役になっちゃってね又かと思いますものね。

雷蔵 もっとユーモラスな味とミュージカル性を加えて行かないとアキられますよ、僕はその点に重点をおいて 行き度いと思ってます。

嵯峨 全くだわ、会社も演技者の正しい考え方ならどんどん採用しなくちゃ嘘よ、雷蔵さんなど強い発言権を 持ってもらい、本当にファンを楽しませる作品を作って欲しいわ、頑張ってね。

雷蔵  その点張り切ってますし活発に発言もしてますよ、娯楽映画は結構だけど一本正しい線があって欲しいと常に僕は思ってる。

本誌 今晩の対談はお二人の熱心な時代激論に傾いたようですが、実は雷蔵さんと錦之助さんの対談のようなケンカ対談を此方としては希んでいるんです が。

雷蔵 そりゃ無理な相談ですよ。だってこの間、蛇姫様で久ぶりに嵯峨チャンと交ったのですが、一時のジャジャ馬的(イヤ、これは失礼)は嵯峨チャンでなくなっ て大変おしとやかになった嵯峨チャンだったので驚いたんですよ(笑)

嵯峨 アレが私の地で御座います(笑)

雷蔵 向うがジャジャ馬ならコチラも勇ましくケンカしちゃうんだけどこうおとなしく出られちゃあ歯も立たんでしょう、そうだろう嵯峨チャン!

嵯峨 他人のことばかり仰言いますがね、雷チャンだっておとなしくなったわよ(笑) だからこっちだってポンポン言えないわよ(笑)

何時か来る女性のために

雷蔵 ところでどうですかね、新居の御主人の気分としては、

嵯峨 そうねえ、何となく肩が凝るわ。お客様をお迎えするとシンが疲れちゃう。

雷蔵 今晩などとくにそうでしょうよ、相済みません(笑)

嵯峨 話を変えましょう(笑) 雷蔵さんはどんな女性が理想なの。

雷蔵 ソーラ来た(笑) いつ出るかと待ってたんだ(笑) 今のところ無趣味ですな、だから家の中だって何も趣味的なことをしてありません。これは何時か来る女性 の為にそうしてあるの(笑) 迎える女性の趣味と僕の趣味が合致した趣味こそわが家の趣味ということになるんじゃないの、一家は一方的だといけないと思うんで す。だから僕は独身の内はあく迄無趣味でゆきたいと思ってますよ。

嵯峨 へェー、雷チャンの考え方っていいわねえ!来る女性は幸せだナ、何なら私が行っちゃおう!(笑)

雷蔵 心にもないこといいなさんな(笑) 嵯峨チャンは今や仕事は好調だし全てに優越感的満足を味わってるんでしょう?

嵯峨 それは雷蔵さん少し言い過ぎよ、お仕事は一応安定したにせよまだ野心のカケラも果してないわよ、会社にチョロマカされないで自分を上手に活かすということは大変な事業よ、ことに女優の場合は・・・とつくづく思いましたわ、だけど今年は亥歳でしょう、私の当り歳だから会社のチョロマカシに乗らぬよう猛進しようと思ってます。だけど苦労なことね。

雷蔵 そりゃ苦労は一生尽きませんよ、僕でも嵯峨チャンでも自分自身の力を鍛えて勝負するより手はないんだものね。

嵯峨 雷蔵さんの闘志満々の意気大いに買うべしよ!お互いに頑張りましょうね、どうも話が少し固くなってファン誌には申しわけないんだけど大いにファイトを燃やしつづけてこんごも二人は張り切ってゆくという言葉を読者へのお土産として今晩のお別れの御挨拶に致しましょう。(「映画ファン」59年7月号より)