雷ちゃんの狸吉郎君と若尾ちゃんのきぬた姫が、民謡のメドレーを縫っておどるところは思っただけでも壮観だな。歌は(本をみながら)ソーラン節、チャッキリ節、よさこい節、佐渡おけさ、五木の子守唄、草津節、会津磐梯山・・・まさに民謡ブームだ(笑)。各地の狸姫に、神楽坂浮子、松尾和子、藤本二三代・・・水谷良重ちゃんが、ソーラン節を歌うなんて一寸聞きものだよ。

若尾 日本語の歌ですものね(笑)おそらく初めてなんじゃないかしら?

雷蔵 歌が変るにつれ、バックも南国土佐になったり、雪の降る佐渡になったり・・・幻想的だね。

 僕は前から時代劇のミュージカルをものをやりたいと思っていたが、これが成功したら、どんどんこの方もやって行きたいな。

雷蔵 企画にバラエティが出来るね。

 僕は以前から一度若尾ちゃんと共演したい思っていたのが、今度はじめて実現してハリ切っているんだよ。

若尾 えゝ。私もよ。雷蔵さんとも、勝さんとも御一緒で恋人同志で、しかも三角関係じゃないんだからいいわ。誰も失恋しないんだし。

雷蔵 とにかく狸ってのはいいよ。ポンとお腹を叩けば、ドロンと消えたり化けたり出来るんだもの、愉快だね。

若尾 きぬた姫のセリフにもあるように化けるということは、即ち空想の実現なのよ。

 つまり、夢の実現ということだな。

雷蔵 そうだね。だから、ぼくたちみんなで映画をみる人の(僕たちも含めて)美しい愉しい夢を作り出しましょうよ。

若尾 えゝ、誰でも楽しめる明るい夢をね。

 その意味で、お互いに大いに化かしっこするんだな(笑)

(公開当時のパンフレットより)