雷蔵さんの4つのポイント

その一、魅力

市川雷蔵さんは中村錦之助さんとならんで、これからの時代劇をになって行くスタアだ、ということが最近よくいわれます。

事実、雷蔵さんの人気は最近どんどん出ていますが、錦之助さんとくらべて、やわらかみや甘さが少なく、どちらかといえば地味なスタアである雷蔵さんの魅力はどこにあるのでしょう。

彼の魅力を一言でいえば、すっきりと垢抜けしていることです。さっぱりとして嫌味のないことです。まず雷蔵さんの顔を研究してみましょう。眉も目も鼻も口も、それぞれが男らしく、きりっとしたところがあります。

これは、他の若手の美男スターたちが、女装してもおかしくないのとくらべると、確かに雷蔵さんの違ったところです。顔にまるみがなく、固くしまりすぎているともいえますが、それがかえって清潔で、強く鋭い感じがするのです。雷蔵さんの顔が正面からクローズアップされた時などその特長がよく出ています。

映画の中の彼が、やくざになっても武士になっても、正義感が強く、敵を怖れないことなどが、いかにも本当らしく、安心してたよれるような気がするのは、彼の男らしさによるといえましょう。

このことは彼の身体全体からもいうことができます。雷蔵さんはもし映画に出なければ関西歌舞伎の大俳優になるだろうといわれるくらいの名門の出ですから、つねひごろから俳優としての勉強を十分に積んでいます。

踊りできたえた女優さんやスポーツマンだった男の現代劇スタアが立派なスタイルの持ち主であるのと同じで、彼の普段の時からの訓練は、雷蔵さんの動きをきびきびしたものにさせているのです。

つまり雷蔵さんの場合は、顔から受ける印象も全体から受ける感じも、さっそうとしていて男らしいのですが、この点では、最近現代劇の二枚目スタアに、男性的な強さとかしぶみとかが要求されているのと同じことだといえましょう。

彼がやると時代劇の中の人物でも、私たち現代人にぴったりくるのではないでしょうか。(56年3月発行、「平凡スタアグラフ・市川雷蔵集」より)