長女、長男を囲んで家庭に遊ぶありし日。おさなごに、真正面に向い「おいっ、大きくなったら立派な人になるんだョ」とあやしたという。

 もう、市川雷蔵という俳優はこの世にいない。死後8年目というのに、今もって主婦、女子大生、そしてサラリーマンの映画ファンを魅了し続けている役者だましい。

 残された家族は一体どうなっているのであろうか?雅子夫人を主とする、太田吉哉(雷蔵の本名)の子供達はひっそりと生活している。長女・尚江ちゃんあはもうそろそろ中学2年生。ワンパクだった光紀くんが中学1年の受検も間近だ。一番下にひかえる有美ちゃんの可愛らしい姿は、文字通り雷蔵のいきうつし。そろそろ桜の花の咲きみだれる季節も近い。生前、おさない子らをつれ、観桜会を楽しんだという雷蔵の私生活は、先にものべた通り、銀行マンと見えるほどの実直さでマイホームパパですらあった。

 市川雷蔵の墓は東京の池上は本門寺にある。なつかしの雷蔵ブームとあって花と線香のにおいはあとをたたない。7月の命日をまえにしていつの年になくにぎわっている。

 市川雷蔵、永遠の名優ともいえるひとりであろうか・・・。

雷蔵出席の最後の後援会の集り。(昭和42年、11月東京・芝の留園にて)