二枚目スターの結婚は難しい

 その四銃士の一人である錦之助が、日本映画界のトップ女優の一人である有馬稲子と婚約し、来年秋には挙式かというニュースが流れたのはつい先日のことだ。そしてまたこの十二月二日には、石原裕次郎と北原三枝が永すぎた春に終止符をうち、晴れて結婚へとゴールインするといった具合に、二枚目スターの結婚話が相次いでいるが、錦之助といい裕次郎の場合といい、とかく二枚目スターの結婚問題は大きく騒がれ、また当事者が人気スターであるだけにお祝いごとでありながら、時には秘密裡にことを運び、また時には余儀なく永すぎる春をかこたなければならないということにもなる。

 まことに難しいのが人気スターの結婚問題で、錦之助、有馬稲子の突然の婚約ニュースにしてからが、すでに両スターはいうに及ばず東映、松竹の神経をなやませ、また両家の親族間にまで、予期せぬ事態の突発で、それぞれ必要以上の神経を使わせているのが実情だ。

 このように“二枚目スターの結婚問題”は、本当にむじかしいものなのか、あるいは事の処理の仕方によっては、あんがいスムーズに運べるものなのかどうか−。

 結婚コースへの次期ダークホースと目されている市川雷蔵に、二枚目スターの結婚問題について、ざっくばらんな意見をきいてみることにした。

錦ちゃんも僕も同じ立場

 「しかしなあ、錦ちゃんの事件が起きている時だけになあ、こりゃあ慎重にしゃべらんとあかんなあ。ようむずかしい注文を出しはるわ、しかし上手いこと考えたなあ」と、雷蔵はまたカラカラと笑う。

 同じマゲ物でもこんどの忠直卿は徳川家康の孫で、越前六十七万石の藩主、名君として誉れの高い殿様という役なので、目の前にいる雷蔵のアタマ(かつら)は、股旅物のイナセとは違ってキチッとした少し高目のマゲがのっている。イナセの雷蔵は粋だが、このアタマの雷蔵にはほのぼのとした気品がのぞけて、これはまたキリリとした貴公子ぶりが美しい。

 六年前からの希望がかなって実現した、忠直の喜びが雷蔵の顔にあふれているようだ。「だけどほんまに僕もびっくりしたわ」と雷蔵の話はまず錦之助の婚約ニュースから−。

 「そりゃあ、新聞や週刊誌がニュースを追うのはわかるで、だけどそのニューの書きかたに問題があった場合はやな、やはり僕とて同じ立場の人間だし気になるわ。錦ちゃんのニュースにはちょいとそんなとこがあるやろ」と錦之助に同情的な意見を開陳する。

 「仮に錦ちゃんの場合が事実だったとしてもやな、やれ女性の方の身元調査がどうだこうだなんて、そんなこと騒ぎたてんといてもええやないか。おめでたいニュースなんやから、書くなら書くで愛情をもっえtやってほしい−。僕が一番心配するのはな、ちょっとした記事がもとで、まとまる話もこわれてしまうことがよくあるし、それだけに慎重にやってほしいということやな。僕等のような役者の場合には、それでなくても興味本位に見られるのやし、そのかわり僕等もいろんな点でハッキリしとく必要もあるやろな」と慎重論、マスコミに訴える。そして、

 「役者だって人間なんや、考えたり準備したりする時間というものは欲しいわ。しかしマスコミさんはなかなかそういう時をくれへんわ」と、雷蔵はカラリと笑って見せる。物事にこさわらぬさっぱりとした雷蔵の気性が、この辺りによく出ているが、こういう事を考えなければならないところは、やはり衆人環視の中にいる人気スターという宿命から逃げられないことを自覚しているからだろう。

早く結婚したいが・・・という雷蔵