仲良しコンビ対談


明日も元気で!
名コンビであり仲の良い喧嘩友達でもある
お二人が、追込みセットの合間に語る
「仕事は愉し、毎日元気!」の弁です!


雷蔵さんは国宝の子



山本 雷蔵さんとの対談もネタが尽きたみたいね。

雷蔵 いや、どう致しまして。(声色もどきで)浜の真砂は尽きるも・・・(笑)

山本 アラ、石川五右衛門なみ?

雷蔵 (続けて)・・・雷蔵、富士子の云い合いは尽きまじ(笑)

山本 その「云い合い」という関西弁ね、ちょっと東京弁にないニュアンスですね、しいて云えば、口喧嘩とでもいうんでしょうが、何かもっと親しみのある・・・

雷蔵 すなわち、ぼくと山本さんが、寄るとさわると、忽ちにして起る自然現象(笑)

山本 (笑)何か、モメちゃうのね。

雷蔵 スムースに事が運ばないのですな。

山本 でも、今日はもっとマトモに行きましょうよ。あつ、そうだわ。いつもお互いに忙しくってゆっくりお話も出来なかったけど、このあいだのお父さん(市川寿海氏)が、重ね重ねの御栄誉で(芸術院会員、朝日賞、無形文化財指定等をさす)本当におめでとうございました。

雷蔵 いや、どうも有難う。ぼくもわがことのように喜んでいるんです。人間国宝なんて、ちょっと変に聞こえますが。さすがは、ぼくのオヤジだけのことがある・・・(笑)

山本 アラ、逆じゃないの?この親にしてこの子ありっていうわ、ふつうは・・・。

雷蔵 ええ、逆もまた真なりといいましてね(笑)

山本 心臓ね。

雷蔵 いや、雷蔵です(笑) しかし、オヤジには、全く敬服しますね。七十いくつというあの年で、いまだに芸に対する意欲は、少しも衰えておらんのですよ。次々と新作に取り組んで行って・・・学ぶところが大いにありますね。

山本 そういえば、このあいだテレビで寿海さんのお芝居を拝見したのですが、本当に雷蔵さんによく似てらっしゃるのに驚きましたわ。

雷蔵 それも逆ですわ。ぼくが父に似ている(笑)

山本 そうね。それにセリフの張りというかとても若々しさがあって、本当に素晴らしいお父様ですわ。ああいうお父様をお持ちになって、雷蔵さんは倖せね。責任もあるけれど・・・。

雷蔵 その通り、国宝の子(笑)として、責任重大です。

山本 じゃ、重要文化財くらいのところね、雷蔵さんは・・・(笑)

雷蔵 いや、光栄です。山本富士子さん御指定で・・・人間重要文化財・・・(笑)

演技プラスアルファ

山本 この間、東京へ帰った時、お謡と仕舞を少し習ってきましたのよ。

雷蔵 ああ、『歌行燈』の・・・いやに、手回しがいいな。ぼくは『ぼんち』でずっと休むひまなしで、やっと今日からこの『大江山酒天童子』セットへ入ったぐらいですが・・・。

山本 雷蔵さんの出を待っていたのよ。でも結構忙しいんです。この間からずっと、この渚の前の舞のお稽古をしていたので・・・。

雷蔵 稽古といえば、山本さんは撮影の時、いつも何かそんなものがありますな。

山本 ええ、ほんと。『東京の女性』では歌。この前ごいっしょの『かげろう絵図』では、三味線と富本節。『人肌牡丹』では、連獅子の踊りでしたわね。そういえば不思議に、私の出る映画で、演技だけというのは珍しいくらいで、いつもなにか、演技の外に何かそういったお稽古ごとがありますね。

雷蔵 はたで見ていると、たださえ忙しい人なのだから、吹替えでやってやれないこともないのに、・・・と思うくらい悲壮なときもある。

山本 ええ、短時間の練習で、見苦しくない程度に覚え込むというのは大変ですものね。時にはセットで泣きたくなるくらい・・・。

雷蔵 それをこりないで、相変らずやってらっしゃるその芸術意欲のすさまじさ・・・。

山本 結局、欲張りなのね。何でもその機会に覚えておきたい、という・・・。

雷蔵 大変結構です、その精神!

山本 後がこわいわ、雷蔵さんにほめられると・・・。(笑)