雷蔵・山本プロ



雷蔵 『歌行燈』がすむと、山本さんは、他社出演ですね、待望の・・・。

山本 ええ、東宝の豊田先生の『墨東奇譚』と、松竹の五所先生の『猟銃』ですが、雷蔵さんは?

雷蔵 ぼくは『歌行燈』の前に『続次郎長富士』をやって、その次は伊藤先生の『斬られ与三郎』企画はいろいろあるけれど、確定しているのはその程度ですね。やりたいものはいくらでもありますが・・・。

山本 あの、音楽劇というんですか、オペラ風とでもいうのでしょうか、『安珍清姫』なんか、是非ごいっしょにやりたいですね。

雷蔵 ええ、これまでの日本映画になかった一つのジャンルですし、絶対実現させたいですよ。

山本 美しくって夢があるし、外国人にも理解できるし、堂々と海外へ出せる映画にしたいものね。それと、もう一つ是非雷蔵さんと一緒にやりたいのは、バリバリの現代物で、切実な男と女の話といったリアルなもの。

雷蔵 それは同感ですね。関西もので。

山本 いっそ、漫才でもやしましょうか(笑)

雷蔵 名案!山本さんとぼくなら、台本はいらん。オール・アドリブでいけるわ(笑)

山本 ふだんお部屋でしゃべっていらっしゃる感じの雷蔵さんがそのまま映画に出るというのも、とても魅力があるのに、どうしてそこまで会社が考えないのでしょう。

雷蔵 いや、そのままの山本さんが出れば、それこそ宣伝文句ではないけれど、「山本富士子の新魅力!」(笑)

山本 漫才は冗談としても、たとえば前に森繁さんと淡島さんとでやられた『夫婦善哉』のような関西物をやりたいですね。

雷蔵 よろしいな。
山本 それから、関西で思い出したけれど、近松の心中ものなんも・・・。

雷蔵 ああ、それもいいですね。二人で話していると続々と名企画が生れてきますがな。企画部がいらんみたいなもんや。

山本 いや、それほどでもないけれど・・・(笑)

雷蔵 やっぱり、漫才映画でもやりましょう。

結婚について

雷蔵 この間『ぼんち』の撮影中、若尾ちゃんと相談して、エイプリルフールに二人の婚約を発表しようか、という話が持上がったのです。宣伝部も片棒担いでもらって、新聞社を撮影所へ集めて、二人で堂々と声明を発表するというわけです。

山本 すばらしい名案ね。一杯かかるわよ、誰だって。同じ日、私なんか、また交通事故で怪我をしたなんてデマが、新聞社の間でまことしやかに飛んでいたそうなんです。宣伝部の人が電話の応対に往生したといってました。いつかなんか、九州で死んだなんて、ニュースで放送されたこともあったし・・・。

雷蔵 それが本当にペンで殺されるというわけか、いや、ラジオ・ニュースなら電波かな?・・・ところが、同じ日、ダンボ(若尾ちゃんのお付きの人)が若尾ちゃんのお姉さんに、電車から落ちて怪我をしたと、まことしやかに云ったら、姉さんが本気でそれを信じて顔色が変った。

山本 まあ、大変ね。

雷蔵 幸か、不幸か、丁度その日に、若尾ちゃんがロケで電車に乗るシーンがあるのを知っていたから、信用してしまったらしい。あとで、ダンボはこっぴどく叱られたけれど・・・。

山本 それで、婚約発表はどうなりましたの?

雷蔵 それやこれやで立消えになりましたが、あれはやってたら面白かったと思いますね。後でどやされるかも知れんけど(笑) 日頃、お互いに、根も葉もないような結婚ばなしを、飽きもせずに書いていただいているお礼に・・・。

山本 反撃作戦ね。

雷蔵 今年のはじめごろなんか。ぼくも結婚ブームの御他聞に洩れず、インタビューというと、仕事の話でなくて大抵が結婚についての話で、ちょっと情けないような気がしました。それで、おしまいに、三年以内に結婚するということを声明したのです。

山本 雷蔵さんらしいわ。

雷蔵 三年以内ということは、明日にも結婚するかも知れないし、やっぱり三年後かも知れないしという含みを持っていて、事実三年たてばぼくも三十一歳だから、いくらおそくても、それくらいまでには結婚をして、いい家庭を築きたいですからね。

山本 本当ね。映画俳優といったって、結局みんな人間なんですものね。

雷蔵 結婚して落ちるような人気なら、それは本物の人気じゃないとも云えるし。