女護ケ島の雷さんファン
おのこのトイレを占領する程雷さま

後援会は女性ファンが気焔をあげ!!

      マンガルポ    小林匡

とき、十一月二日。ところ、九段、千代田公会堂と書くと、読者諸兄姉はハハア、何か催し物があったなと、思われるでしょうね。正にその通り、菊かおる、シルバーウィークの、第一日、つまり日曜に我等の時代劇スター市川雷蔵さんの後援会の集いがありました。

 丁度台風二十六号が接近しているときでもあり、お天気は悪かったけど、ここ千代田公会堂は和気アイアイの和やかな女性旋風。雷蔵さんを巡る約五百人の女、と云った風景。

 ボクが「近代映画」と声をかけ、受付を通ると、後援会の人らしいその受付嬢が「御苦労様」と丁重なるおじぎをして、腕章をくれました。

 豪華な上質のアート紙のプログラム、カバーは赤、黒、金、銀の歌舞伎調の色彩、ボクは成程とうなずきました。

 読者の諸兄姉もすでに、雷蔵さんが、関西歌舞伎の市川寿海さんの息子さんだと云うことは御存知ですね。時代劇スターは歌舞伎二世が多いのですが、雷蔵さんは大映にあってはピカ一の存在、今日の沢山の集いがうなずけます。パラパラとプログラムをめくり、盛り沢山の催しに、ボクも雷蔵さんのファンの方に対する、サービスが嬉しく感じました。

 やがて、開会、司会はラジオ東京の芥川隆行アナウンサー、その軽く、巧みな話し振りに、並みいるファンの諸嬢も、ワアワア、キャーキャーと、花やかな幕開けとなりました。

 次いで後援会理事長の梅原さんの挨拶、現金なもので、さすがに皆さん、シーンとして聞いてましたが、愈々、当の雷蔵さんが芥川アナの紹介で登場するや、いや、後は御想像に任せますよ。ボクはとに角、ビックリしました。五百人近くの女性のカン声と申しましょうか、キョウ声と申しますか、それは天をつき、地をゆるがす大騒ぎ(これはチト、オーバーな表現ですがネ)雷蔵さんの一言、一動にファン諸嬢はワキにツクのであります。

 雷蔵さんの「春の私より、この秋の私をごらんになって下さい。キット成長云々」という様な意味のユーモアたっぷりな御挨拶。

 終って、記念の花束、記念品贈呈、人気者の雷蔵さんのことゆえ、その贈られた数の多いこと、映画関係の諸誌より十余り、時代劇関係の各後援会よりお祝いの花々、「曰く、千代之介後援会より」、「美空ひばり後援会より」、勝新太郎、中村錦之助後援会等々、ソレハ大へんなもの、それらが大映の叶順子さん達の手で贈られました。

 毎度のことながら、この貧乏画家のボクは、「あの花束は、後でどうするのだろう?」余計な物思いにふけっていました。

 すると、舞台で何か行われているらしく、キャッと云う、セン望のため息とも聞える金切声、見ればファンの代表で花束を贈った女性が、雷蔵さんの耳元でヒソヒソ。それに雷蔵さんが軽くうなづいている様子、傍では芥川アナがきき耳をたてていると云った按配。雷蔵さんに握手を求めたところ、雷蔵さんは茶目っ気タップリにズボンで、手をゴシゴシこすり差出すと、その彼女、雷蔵さんの手を握ったきり、離さないんです。それを見て又、ワアワア、キャーキャー、全く人気者はウラヤマシイですよ。

 それから番組も、映画評論家の山本恭子さんとの対談、福引、ジェスチャークイズと、ファン諸嬢を喜ばせながら進んでいきます。