女護ケ島の雷さんファン
おのこのトイレを占領する程雷さま

後援会は女性ファンが気焔をあげ!!

      マンガルポ    小林匡

 休憩があって、雷蔵さん主演映画『弥太郎笠』の上映、又休憩と長時間に渡るプログラム、ボクはビロウながら、トイレの用を思い出し廊下へ出ました。

 廊下では三々五々とかたまり、興奮さめやらぬ諸嬢が雷蔵さんについて語り合っていました。又一隅では雷蔵さんのブロマイド、羽子板、のれん等、ファンには至れり尽くせりの心づかい、感心しながらトイレへ来て見ると、女性側は満員なのに、男性側はボク一人、コレはオーバーな表現ではありません。余りの混み方に男性側に進出する有様、勇敢なる一人が、ボクのいるのに気づかず、チョットのぞいて「アラ、誰もいないわよ」「そお、じゃ、こっちを借りちゃおう」と入って来る始末。ボクはすっかり頭に来てしまいました。でもボクのいるのに気づいた一人が「アラ、男の子がいるわよ」に、イヤーンとばかりに、皆飛び出して行ってしまいましたが、正に女護ケ島です。すさまじいのなんの、こんなに女性にもてる雷蔵さんが、ネタマシク思われてきたのは、ヒガミでしょうか。ボクにはタッタ一人の女の子もいないのに、考えると世の中はさまざま。

 楽屋で雷蔵さんに会おうと思い行って見ると、ここもファンの黒山。カメラ片手に雷蔵さんを写さんものと、一生懸命になっている人、サインブックを持ってウロウロしている人で、中へ入ることも出来ませんでした。やっとの思いで中へ入ると、次の助六の支度なのでソッと出て来ました。

 愈々これから、雷蔵さんの踊りです。歌舞伎出の踊りの得意な雷蔵さんが、舞台一面にくりひろげる、花やかなケンランな舞い、ファンならぬ、このボクもうっとりする見事なものです。会場は最高潮のフンイ気、皆さんが興奮するのも無理からぬことだと思います。

 フト、横で挨拶するきれいな女性がいます、同じ社の現代劇スターのトップ若尾文子さん。キット雷蔵さんのこの集いのためにお祝いにでも見えたのでしょう。

 舞台では、おはやしの連中を従え、水を得た魚の様に踊る雷蔵さんの助六、この日のクライマックスでした。

 終ってサインボールの投げ入れ、この日の記念に、是が非でも貰って帰りたいの一心から、目の色もかわってくる始末。あちこちから声がかかり、助六扮装の雷蔵さんが袖の邪魔になるのを芥川さんに助けて貰い、あっちに投げたり、こっちにほおったり、これで又ワアワア、キャーキャーの騒ぎ。

 野球のうまい?ボクは雷蔵さんの投げた一つをシングルキャッチ、横でうらめしそうに見ていた高校生らしい女の子に上げたところ、喜色満面にあらわし、大事そうにそのボールを抱きしめていました。オット、そのボールは雷蔵さん代りに大事にされることでしょう。

 春よりも秋、今秋より来春をめざして、たえまない努力を続ける雷蔵さん、真面目に芸をみがかれる雷蔵さん、こんなところに雷蔵さんの人気のあるゆえんがあるのでしょう。

 今年は『炎上』で、初めて現代劇の新分野を開きましたが、これを機に、又一段の飛躍をとげられることでしょう。昼夜二回にわたっての秋の集いも無事に終りました。

 これからの雷蔵さんの健康を祈りつつ表に出たら、十一月の氷雨、みすぼらしい漫画家のボクのやせた肩に落葉がハラハラとかかる連休第一の夜でした。