☆お化けがホテルに泊った話

弥太郎 殺生やな、寿命がちぢむわ、そんなことされたら・・・。ぼくのお化けはな、お化けと云ってもちょいとちがうんや。それはそれは上品な京都のお化けなんや。

里見 京都のお化けって、何か変ってるんですか。

弥太郎 それがちがうのや、(お化けのかっこうをして)ヒュードロドロやないんや。男が女になったり、おばあさんが舞妓さんになったり、つまり変装ちゅうのかな、化けることをいうのや。

雷蔵 なんや、リイちゃん、女装でもしたんかいな。

弥太郎 もう大分まえの話やけど、僕があるヨーロッパの貴婦人になってな。(笑)友達がインド人や、それで二人で神戸へ飲みに行ったんや、途中で車がパンクしてな、友達は直せへんやろ、しょうがないから、貴婦人のぼくがやな。(笑)

雷蔵 貴婦人だけ、余計やがな、しょもない男のくせして。(笑)

弥太郎 化けてるんやもん貴婦人や、その貴婦人がやね車を一生けんめい直してる、道のまん中で、他の車は、通れへんがな。

錦之助 交通妨害で罰金か。

弥太郎 ところが、女性が直してるゆうんで、誰も文句云わずに待っててくれるんや。ずうっと車がつかえてんのに・・・そんとき女は得やなあと思ったわ、ほんまに。(笑)

橋蔵 まさか、その貴婦人がリイちゃんとはね。(笑)

弥太郎 それから神戸のバーへ行った。先きに、友達が入って行ったら、インド人と思い込んで入れてくれへん、入れてくれなきゃ、困るやろ「実はぼくや」って正体を白状して飲ましてもらって、それから二人でホテルへ行ったんや。

里見 そのお化けのままですか?

弥太郎 もちろんやがな(笑)もったいない、せっかく化けたのに。それでホテルへ行って、スラスラ英語でサインして泊った。次の日、二人とも背広に着かえて、サーッと出てきたら、おどろいてたわ、ホテルのボーイが。(笑)

賀津雄 その方がコワイお化けだね。