おめでとう乾杯!

『おめでとう』大の仲よし錦ちゃんと雷蔵さんは揃ってブルーリボンの大衆賞と主演男優賞を獲得して、一足先きに春がやってきたようにゴキゲンです。さあ、乾杯だ、乾杯だ!今年も負けずにガンバルぞ!

今年は春からエンギがいいぞ

雷蔵 こんばんわ、錦ちゃんこのたびはお目出とう。

錦之助 いやア、良雄(雷蔵さん)ちゃんこそ、主演賞ほんとうにおめでとう。仲よしの君と一緒に、ブルーリボン賞を受賞出来て、とてもうれしいんだ。その上、良雄ちゃんはキネ旬の主演賞まで貰ったんだから大したもんだよ。友人として、本当にうれしいよ。

雷蔵 気持わるいな、そんなに云われると(笑)でも賞を受けるというのはええもんやな、そやろ錦ちゃん、授賞式の時、なんやこう眼がうるんできよったぜ。

錦之助 ほんとうだね、ぼくはね、市川雷蔵が主演賞、中村錦之助が大衆賞というんでなくてね、自分としては大衆賞を受けたということがすごくうれしいんだよ、もっともこれはぼく一人の力ではないけれど・・・

雷蔵 それはそうや、映画というものは一人や二人の力で出来るもんやないし、監督さんをはじめ裏方さんの一人一人までの協力があってこそ、はじめていい作品が出来るんや。

錦之助 そのとうりだよ。とくにぼくのような時代劇の場合は、斬られる役の人たちの上手なこと、このことが非常にぼくの演技を助けてくれていると思うんだ。

雷蔵 それはぼくの場合も同じやと思うけどね、ただぼくは時代劇の俳優やろ、それがはじめての現代劇(炎上)で受賞というのがね、残念といっちゃいけないけど、出来ることなら時代劇でとりたかったよ。

錦之助 そうだろうな、でも俳優として認められたんだから、そうよくばっちゃあ。(笑)

雷蔵 いやよくばる(笑)この次は時代劇で主演賞やぞ。(笑)

錦之助 いいぞ、その意気、ぼくも負けないぞ、ぜったいに。

雷蔵 きょうそうや、二人で。

錦之助 ぼくはね、いい映画とは豊かなごらく性を持ったものだと思うんだ。

雷蔵 同感だね。

錦之助 ぼくが映画に入ってこの二月で五年目になるんだけど、五年目にブルーリボン五人目の大衆賞を受けたということは、なんかえにしというようなものを感じるんだけど・・・

雷蔵 ぼくも五年目や。ぼくの場合「炎上」をやりたいと会社に企画を出した時、皆になに反対されてね、賛成してくれたのは、永田社長と市川監督だけやった、それだけに今度の受賞は涙がこぼれるほどうれしかった・・・

錦之助 自分の企画、しかも反対を押しきっての作品、わかるね、その気持は・・・

雷蔵 この気持を忘れずに、来年も再来年も頑張るよ、錦ちゃんに負けんように。