胸に秘めた恋人は?

雷蔵 おヨメさんやがな、君もテキレイ期とちがうか?

錦之助 なにをいってんだよ、良雄さん、あんたの方がボクより兄貴なんだろう、そっちが先だよ。

雷蔵 恋に上下のへだてなしや(笑)かまうことあらへんどうぞお先に。(笑)

錦之助 ちぇっ、やんなっちゃうね、こんな時ばっかり(笑)だいいち結婚するったって一人じゃ出来ないんだから。

雷蔵 そりゃそうだ、それでボクもまだしないでいるんや。

錦之助 おっ、その気があるんだね、相手があれば。(笑)

雷蔵 そりゃそうやボクかて人間やもの。時期がくれば結婚するさ、ただ目下のところ相手がいないというだけやね。

錦之助 なんだい、こっちの云おうと思ってること云っちゃって(笑)うまく逃げたね。

雷蔵 こればっかりは、わからんからね、明日にでもいい人が現れたら、どうなるか、何歳までは結婚しないなんて云えないよ。(笑)

錦之助 大変正直でよろしい(笑)ボクもそうだよ。(笑)

雷蔵 なんや人に云わしてずるいぞ。(笑)

錦之助 とんでもない幼長の順をわきまえてんだよ、これでも(笑)

雷蔵 ほんまか(と、錦ちゃんの顔をのぞきこみながら)いうこと聞くか。

錦之助 ゼッタイ・・・

雷蔵 きくな。

錦之助 ゼッタイきかない(笑)

 

雷蔵 あほう、すぐそれや(笑)かなわんわ。

錦之助 そりゃそうだろ、かなわんだろう、まだ一度も勝てないんだから、野球では。

雷蔵 こらっ、また野球のこと云うか(と、手をふりあげる)

錦之助 こわいこわい(笑)ところで良雄ちゃん、ボクは前から思っているんだけどね。

雷蔵 うん。

錦之助 一ぺん二人で映画を撮ってみたいんだよ。

雷蔵 いいねえ、どんなもの。

錦之助 江戸っ子と浪花っ子の話しでね、これはどうしても良雄かhんと、ボクとでとりたいね。

雷蔵 うん、弥次喜多のようなもんだね。

錦之助 世話物でもいいし。

雷蔵 会社が違うのでむずかしいと思うけど、いつかはやりたいね。

錦之助 実現する日を楽しみに、それまでじっと胸に秘めるか。(笑)

雷蔵 なんや、恋人みたいやないか。(笑)

(平凡59年4月号より)