今年はまず、田代さんと初顔合せした「月姫系図」というお正月映画からスタートしたが、演出の渡辺実監督とも初めてで、さらに私にとっては第一回のワイド映画ということになった。スチールも、色彩も大へんよかったが、夜間撮影が続き閉口した。

続くお正月映画「遊侠五人男」は長谷川先生以下オールスタアもので、一日伊豆へロケに行ったが、肝心の富士山が見えず残念だった。次の「花太郎呪文」は浦路君のほか、一年振りに近藤君が加わって勇しい女目明しになったが、大へんな長篇小説をつめこんだため、筋もわかりにくく、くすぶった感じの映画で上出来とはいえないと思っている。

大映が文字通り東西のオールスタアを総動員して製作した「忠臣蔵」では浅野内匠頭を演じたが今までにも色々先輩諸公がおやりになった役だけに私としては大へん苦労した役の一つです。ただ初めてお会いする監督の渡辺邦男先生が、セットでは大いに気分を出して下さったので大へん芝居がし易かったことを感謝している。オールスタアものだから、私が気負ったほどには描かれていないのが残念だが生涯忘れられない思い出の作品となろう。

さらに久し振りにコミカルな役で出演した「旅は気まぐれ風まかせ」は、時代劇発初出演の根上さんを迎えて、今までとは大いに違ったフンイキの映画になったことは企画の初めからの狙いでもあり成功だったと思っている。私としても今までにない役だけにすこぶるやり甲斐のある一作だった。できれば根上さんと兄弟コンビになって続篇を作りたいと考えているところ。

いまゴールデン・ウィーク公開の「命を賭ける男」に出演中だが、私の水野十郎左衛門という役が、今までの悪役と違って、その時代に生きる青年、旗本の悩みを巧みに描き出されているので、大いに意欲を感じてやっている。