さきにもいったように人物評をさせたら大したものだが、彼が歌舞伎の世界に生れず、大学へでもいって論理性を学びとっていたら、きっと一流の評論家になったことだろう。そういう彼のことだから、他の人から自分への批判に耳を貸すことも決して忘れない。合点のゆかぬ点はではしつように食い下がり、反発もするが、的を射られるとあっさりカブトを脱いで反省することにもやぶさかではない。これが彼の近代性であり、合理精神なのだが、仕事もこういう調子で万事割りきっている。人によっては疲れたときのインタビューなど「かんにんして」と断ってしまうところも、彼は決してそんなマネはしない。「それも仕事やろ」と、イヤな顔もしない。あれやこれやとオフ・スクリーンの雷蔵を書いてきたが、要するに彼の行動の一切合切が仕事に直結しているのだ。

 去年、ブルー・リボンの男優主演賞を受賞した『炎上』の完成したときも、自前で東京へいって試写会場をまわったり、新聞社へ挨拶にいったりして、大阪の本社でほかの仕事を頼まれても「今度は独立プロのつもりで来たんだから」とほかの仕事はみな断ってしまうという一本気。またスキーにいって足でも折ったら撮影にさしつかえる、泳ぎにいって陽に焼けたら、カラー撮影に悪いからと他のスターに誘われてもたくみに身をかわしてしまう。そのどれもこれもが“仕事の鬼”といわれる彼の本当の姿なのだ。

 彼はスタジオにきても自分の部屋でボサッとしてることがない。企画部かスタッフ・ルームにいるか、宣伝部で誰かとしゃべっている。おさまりかえってないで、あたりにドン欲に眼を光らせている。『濡れ髪三度笠』で錦ちゃんのダーク・ダックスの向うを張って「マヒナ・スターズ」を出演させたのも、彼のそういう企画攻勢の一つだった。いまとなっては歌舞伎へ帰る意志はなく、なんとかしていい映画を作ろうという意欲に燃えて、人より二倍も三倍も行動的だ。京都に引っ込んでいて古いといわれるのを嫌って、暇を見付けては、一人で東京へ刺激を求めにいくのもそういう熱心さの表われとみてよかろう。