由原木 これから夜間セットだそうで。

雷蔵  倉田典膳になります。

由原木 『新・鞍馬天狗』はヅラや、いろいろなきめごとに苦労なさったそうですね。

雷蔵  これまでのものを踏襲するだけでは意味がありませんからね。わたくしなりの工夫をこらしたのですが・・・

由原木 ファンには鞍馬天狗というイメージが出来上がっているので、とまどったということはあるでしょうね。

雷蔵  ですから、二作目はそうした声を素直に受け容れましてね。スタッフと相談のうえ、ファンのイメージに合った鞍馬天 狗にすつもりなのです。

由原木 一部ではラストの近藤との対決で、パッと飛びあがる特撮がありましたけど、これからも必ず特撮を入れるそうですね。

雷蔵  そういうことになっているようです。それも、以前の作品とは違った味を出そうという狙いからでしょう。カメラもズームが出来て、クレーンの移動など、全然必要がないとまではいいませんが、だいぶ利用価値がなくなってきているのでしょう。ストーリーそのものは昔と変らなくても、表現は新しいことをいろいろやれるようになりましたから。

由原木 『鞍馬天狗』『眠狂四郎』それに今度の『剣鬼』と、このところ雷蔵さんの時代劇が続きますが、表面的なものだけでなく、役がらの切り替えが大変でしょう。

雷蔵  役者というものは、朝、鏡の前に立って、メーキャップをつくってるうちに、だんだんその人物になっていけるものでしてね。また、そういう訓練を積んで来ていますから、鏡の前にピタリと座わればメーキャップ、ヅラ、衣裳・・・とだんだん型の上で役の人物になっていくもんですよ。そこへいくと現代劇の場合は、かなりつらいです。