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雷蔵 『剣鬼』はわりに異色の部に属するんですがね。
由原木 原作を連載中にずっと読んでました。犬っ子と呼ばれる居合い抜きの名手の悲劇でしょう。原作のイメージが暗すぎるので、どうしても雷蔵さんに合わないような気がしたんですがね。脚本を見たら、かなり雷蔵らしくなっていた。ラストは結局死なないんですね。
雷蔵 死んでいるともなく、生きているともなく・・・といったとこなんですね。これもかなり暗い内容のものなので、普通だったら映画化されなかったんでしょうが、もう一本企画に出ていたものが、さらに暗い内容だったので、それなら、というので『剣鬼』がOKになったんだと思います。
由原木 『鞍馬天狗』の二作目は山嶽党綺談ですね。
雷蔵 そう、山嶽党の話です。
由原木 わたしがまだ子供のころ、雑誌で愛読したのを覚えていますよ。自分が買っていた少年倶楽部だったか、親父の講談倶楽部だったかどちらかは忘れましたが、たしかに挿絵は斎藤五百枝だったと思います。
雷蔵 山嶽党の党首を山本学くんがやるんですが、老人に変装した部分は杉山昌三九さんがやってます。この人物の設定など、なかなかおもしろいですよ。
由原木 天狗のあとは舞台になるんですか。
雷蔵 大阪の新歌舞伎座で十一月の二十八日までやります。
由原木 で、年内には・・・
雷蔵 たぶん『若親分・挑戦』(註:『若親分喧嘩状』)というのをやって、また天狗、狂四郎と回ってくるんじゃないでしょうかね。
由原木 からだを大切に、頑張ってください。
(大映グラフ No 28/65年11月号)