女の知らない男の弱さ

記者: こんどは逆に“男の弱さ”といきましょう。女の知らない男の弱さ−。

雷蔵: 男の泣きどころ?それはむやみに公開すべきではないナ。大鵬君なんか、女性のファンが多いから。

大鵬: わしらもう自分の弱さがつくづくいやになりますよ、どうしてもっと強くなれないかと・・・。

記者: 男の世界のきびしさですね。

雷蔵: そらそうですよ。これがまず女性はぜんぜん通じない。そのうえ彼なら彼の、僕なら僕の職業上の制約がある。おなじ年代の人にくらべて、一面においてはたいへん幸福なように見えていて、じつは不幸という面が多いわけですよ。たとえば一般の人たちのように打ち解けた友情関係が成り立たない。それから恋愛の自由がない−自由がないというよりも、自分から否定してゆかねばならない、と思います、正しくいえば。

記者: つまり仕事のためには、恋愛も理性的に諦めるというその心理、これはなかなか女性には通じませんね。

雷蔵: そして冷たいなぞと恨まれる(笑)そういうところがちょっと悲劇だよ。

記者: よく弱き者男なり、女なりといいますがね、男か女かということでは?

大鵬: サインなんかのときは、女性のほうが心臓強いですよ。(笑)男のほうは、なんかこう・・・

雷蔵: ロケに行っても、女の子はワンワンくるけど、男のほうは遠慮してね、うしろのほうにいるよ。群集心理の中の女性というのは特に強いね。こわいようなときがあるねェ、ほんと。

大鵬: わしらでもパッとたたかれたりしてね、背中に手の跡つくんだからね。

雷蔵: そう、殺しはせんけれども(笑)ぼくらのようなか弱い身体、ひっぱったり、つねられたりすると・・・

大鵬: そんなとき声には出さんけれども、ギュッとニラむんですよ。(笑)でも、あんまりひどすぎるね。花道なんか帰るとき。

雷蔵: (顔をしかめて)いやだねェ、ああいうのは。腹立つよ。この頃ますますひどくなったね。こないだも撮影所にきて、ウワーッと来よったから、パッと振り払った。ど気ちがいッゆうて。(笑)

大鵬: ああいうのは友だちなんかと集ったときに、それを自慢するんと違うんじゃないですか。

雷蔵: とくに映画界の場合は、いままでの俳優がそんなことされても、ヘェヘェッ笑うてたんだよ。いやアおおきに、よう触ってくれはりましたア。(笑)それで、ああオレはこれだけの人気が出た。ああありがたいありがたいといってね。たいへん低姿勢も低姿勢、こびておったんだよ。それがやっぱり・・・悪影響ですね。

大鵬: わしら、うっかり振り払うわけにもいかないから、あんまりよそ見しないで、さっさと・・・。キョロキョロしとったら、なおさらたたかれるからね。(笑)サッと・・・。

記者: 力のありあまる男の弱さということになりますかね。(笑)