小島正雄 おしゃべりジャーナル

 

 雷蔵さんは、一年に一、二回東京へふらりとやってくる。こまかい仕事はあるだろうが、いわゆる遊び。東京の空気を吸いにくるのだという。その雷蔵さんに今回はご登場ねがった。

 よく雷蔵さんは女ぎらいだ、といわれるが・・・もし、そうだとすれば、どうしてソウナノデアルカ。おはなしは、まずそんなところからはじまった - 。

 

お嫁さんの条件

 

雷蔵: まだいいんじゃないでしょうか。結婚すると負担が重すぎますね。どうもそういう気がしますな。

小島: もう少し、なにかおとなになってからという・・・。

雷蔵: ええ。両親がちゃんと家にいたり、きょうだいかだれかいたりというと、奥さんが新しくそのなかにはいっても、なにか家事の相談にものってくれるし、なにもするでしょうけれども、とにかく、ぼくひとりでしょう、いまの生活は。だから奥さんができたら、二人っきりになるわけですよね。これはたいへんいいようですけれども、仕事に疲れて帰ってきて、二人の家庭にはいらなければならないとしたら、やはりぼくはしんどいですね。

小島: 奥さん自体も気をつかわなくちゃならないし、ご自分にも気をつかうことになりますからね。

雷蔵: ええ。いろいろ仕事の延長で、シナリオを読まなければならないこともあるし、関係している本も読まなければならない。そういう面が割愛されて、どうもできないことが多くなる。

小島: 家庭のサービスのために、仕事の時間が減るということ。

雷蔵: ええ。やはり負担ですね。

小島: まあ、そう考えると、しぜん奥さんになるひとを選ぶ条件っていうのがあるでしょう。

雷蔵: 結婚する相手というのは、やはりばくぜんと考えてはいますね。

小島: たとえば、大きくわけて、同業のものと、そうでないのと・・・。

雷蔵: 結婚する相手というのは、ぼくはね、通俗的ないい方ですと、素人さんを対象にしたいですね。

小島: 素人さんという意味は、なんにも仕事をしていないということですか。

雷蔵: ええ。そういうことです。職業をもっていないひと、いなかったひと。

小島: じゃあ、いわゆるB・Gも条件外になる?

雷蔵: そうです。いわゆる職業に対して未経験な女性です。

小島: そうとうはっきりしたラインが決まっているんですね。やはり、そう思っていらっしゃるには、なにか根拠があるんでしょう。

雷蔵: 仕事と家庭という二つのことを、素人さんのほうが理解があると思うんです。たとえば、女優さんにしてみれば、そういう内情がわかっていて、理解があるようですけれども、わかりすぎていて、かえって理解がなくなると思うんです。

小島: ほとんどわかっているから、自分自身、どこかでひと息つけるところがつくれない。

雷蔵: そうですよ。

小島: 気持のうえで、圧迫感っていうようなものがでてくるのかな。

雷蔵: そうとも考えられますね。

小島: こういうことをいうひとがいますね、わかりすぎていかん。ぜんぜんごまかせない。ごまかすことがいいというのじゃないけれども、わが身というものを助ける方便で・・・(笑)それに、わかっているだけに、ヘンにアドバイスされるわずらわしさ、というのもふくまれますね。

雷蔵: あると思います。