小島正雄 おしゃべりジャーナル
雷蔵さんは、一年に一、二回東京へふらりとやってくる。こまかい仕事はあるだろうが、いわゆる遊び。東京の空気を吸いにくるのだという。その雷蔵さんに今回はご登場ねがった。 よく雷蔵さんは女ぎらいだ、といわれるが・・・もし、そうだとすれば、どうしてソウナノデアルカ。おはなしは、まずそんなところからはじまった - 。 |
四十八時間の徹夜
小島: 雷蔵さんは、つらい仕事、きつい仕事が終って、サッと家へ帰りますか。どこかで、その興奮をさますとか。撮影なんかで、くたくたになることがあるでしょう。
雷蔵: まっすぐ家へ帰りますね。すぐ風呂にはいって、すぐに寝てしまいます。
小島: 寝られますか。仕事の興奮で疲れているというときに・・・。
雷蔵: ぼくはね、たとえば、むずかしい仕事があったとしますね、疲れて帰って・・・そういうときがいちばんよく寝られるんです、なんにもしないでいたときのほうが、いろいろなことを考えて寝られないんです。
小島: じゃあ、いわゆる遊びに出る、というようなときは、仕事のないとき?
雷蔵: なんにもないときがいいですな。
小島: 徹夜、徹夜でやるようなときもあるんでしょう。
雷蔵: このあいだなんて『濡れ髪三度笠』でですね、朝、七時半に撮影所にはいって、ずっとセット撮影を翌日の朝までやって、またすぐロケーションに行って、帰ってきて、またセットにはいって、翌日の朝までやりました。
小島: すごいな。完全に四十八時間の徹夜だったんですね。
雷蔵: 途中、二時間くらいしか寝なかったから、眼はまっ赤になるし、皮膚はドーランののりが悪くなるし、それを画面に出さないようにしようとするでしょう。どうしても出てしまいますけれどもね、きつかったですわ。こたえましたわ。ほんまに。
小島: 二時間くらいでよくもちますね。
雷蔵: すきがあれば、寝るというやつですよ。
小島: あの映画はカラーでしたよね。
雷蔵: ええ、カラーでした。比較的わからないようでしたが、やはりそんな感じが出ていました。
小島: 少しでも寝ると、違うでしょうね。
雷蔵: ええ、三十分でも寝れば、皮膚の張り方がぐっと違ってきますよ。目の色はどうしようもないですが、充血するだけじゃなくて、目の張りというのですか、パッとしない。